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ロシアの大統領車「アウルス・セナート」の正体とは

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TEXT: 南陽一浩(NANYO Kazuhiro)  PHOTO: AURUS Motors/Presidential Executive Office of Russia

  • エジプトのエルシーシ大統領を助手席に乗せて自らアウルスを運転するプーチン大統領
  • プーチン大統領はしばしば自ら愛車のハンドルを握って移動している
  • 2021年5月にアウルスの量産体制がスタートした時はプーチン大統領が祝福した
  • ロシア製の高級リムジン「アウルス・セナート」
  • かなり大きなドルフィンアンテナ
  • 標準サルーン版のリヤシートもカーテンがぴったり閉まるようになっている
  • ボディをストレッチしたセナート・リムジン
  • 市販されているリムジン仕様の後席

2018年に登場したロシアの新興国策メーカー

 ロシアの自動車産業について知っている日本の読者は少ない。旧ソ連時代の高級車「ヴォルガ」や、生きた化石と呼ばれるSUV「ラーダ・ニーヴァ」といったモデルがかろうじて好事家の知るところだろうか。しかし近年は、新たなロシア独自の自動車メーカーを確立しようという流れも活性化。プーチン大統領の肝入りで誕生した高級自動車ブランド「アウルス」が、その象徴だ。

 2018年のプーチン大統領の再選時(じつに3度目の再選)に、まず装甲仕様のリムジンとして就任式で姿を現し、続く軍事パレードではコンバーチブル版がお披露目された「アウルス・セナート」が、今やロシア自動車業界の頂点に君臨している。同年のモスクワ・モーターショーでは、民生版たる「アウルス・コルテージ(率いられた群衆の意)」も正式発表されて、2021年5月から量産体制が本格的にスタートしたばかりだ。

開発にはボッシュやポルシェなど欧州各社が協力

「アウルス(AURUS)」とはラテン語で「金」を意味する「AURUM」と「RUSSIA」を合わせた造語。開発はロシア国営の「NAMI」こと中央自動車エンジン科学研究所で行われ、「ボッシュ」や「ポルシェ・エンジニアリング」が開発に参画したと言われる。生産はロシア連邦内のタタールスタン共和国エラブガ工場で、ロシアの「ソレルス」社、そして同社と提携した「フォード」が生産や品質管理に手を貸していたようだが、3月1日をもって撤退している。とはいえほかにも、遮音設計にはフランスの「サウンド&サイト」社が、4WDシステムには「マグナ」社といった協力パートナーが挙げられる。

ロシア製の高級リムジン「アウルス・セナート」

V8ハイブリッドの4WDで0-100km/h加速わずか6秒

 V8・4.4Lツインターボのエンジンは単体で598ps/880N・mを発揮する。とはいえ純ICE(内燃機関)ではなく、ロシアの「KATE」製9速ATに組み合わせた62psの電気モーターと、リヤトランク下に積んだ350Vのハイボルテージ電力制御ユニット、容量不明のバッテリーを組み合わされたハイブリッドで、駆動方式は4WD。リムジン版の0-100km/h加速は6秒、高速走行時の燃費は100kmあたり10.6Lを謳っている。

ボディをストレッチしたセナート・リムジン

プーチン大統領車は6.5tの防弾装甲仕様

 やや腰高なプロポーションで、メルセデス・ベンツSクラスというよりは、ロールス・ロイス/ベントレーを大陸風のコワモテにアレンジしたようなボディ外観といえる。セナートの非ストレッチ版のサイズは全長5630×全幅2020×全高1685mmで、ホイールベースは3300mm、車両重量は2650kg。地上最低高は200mmが確保されており、0-100km加速は5.8秒と、リムジンをわずかに上まわる。

 ちなみに全長6300mmあるとされるリムジンの装甲仕様、つまりプーチン大統領仕様は6.5tあるとか。20インチの防弾仕様タイヤに火災&爆発フリーの燃料タンク、緊急用脱出口も備わるという。

エジプトのエルシーシ大統領を助手席に乗せて自らアウルスを運転するプーチン大統領

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