CMにヴィンテージな旧車が起用される大人の事情とは
最近、テレビCMやドラマに古い国産車や輸入車が数多く登場していることに気付いたクルマ好きも多いと思います。なかなか雰囲気があって面白いチョイスだとは思うのですが、なぜCMやドラマに新しいクルマが使われないのでしょうか? 今回はそんな不思議な現象について考察してみたいと思います。
パクリカーのようなセンスのかけらもないクルマが登場する理由
テレビドラマの登場人物が乗るクルマのエンブレムが不自然に隠されていたり、見覚えのないエンブレムに替えられていること気付いた人も多いのではないでしょうか。また、自動車保険のCMでは登場するクルマのフロントグリルやテールランプが替えられ、センスの無いカスタムカーのようなデザインに違和感を覚える人もいるはず。クルマ好きとしては「何故?」という疑問が湧いてきますが、これはテレビ業界の衰退と広告制作会社のスポンサーに対する『忖度』が大きいと言われています。
広告収入が主な収入源となる地上波では、テレビCMとして対価を支払う企業への配慮として実在する企業のクルマをイメージさせない架空の存在として取り扱うことで、色々な自動車メーカーに対して広告出稿のアプローチをしやすくしているとのこと。さらに深読みをすればドラマの再放送を行う場合、初回放映で協賛していた自動車メーカーのCMが離れてしまっても、登場するクルマのメーカー色を弱めておくことでほかの自動車メーカーの提供が受けやすくなると考えられます。
また、ひとつのテレビドラマでメインスポンサーとしてA自動車という大きな柱が獲得できた場合、付随するほかのCMでB社のクルマが使われていると、イメージ的によろしくない=「忖度」という大人の事情が生まれます。ライバル会社のクルマを使ったCMとは組み合わせにくくなり、広告製作会社としてはCMに起用するクルマに手を加えて「実在しないクルマ」に仕立てるという、苦肉の策を編み出したのではないかと推測されます。
ダブルブランドによる混乱を招かないように旧車を使用
三井住友カードでは東京03の飯塚さん、鈴木京香さんと日産ラシーン、マクドナルドでは木村拓哉さんと初代日産テラノやフォード・ブロンコ、キリン午後の紅茶では深田恭子さんとランドローバー・ディフェンダー、ユニクロでは綾瀬はるかさんとクラシック・ミニやフィアット・パンダなど、話題のCMには数多くの旧車たちが登場してクルマ好きを喜ばせています。
しかし、その裏には「広告掲載基準」なるものが存在し、「広告の主体者の明示」としてダブルブランドによる広告(広告主の提携企業名などを表示する必要がある広告)の場合には「ユーザーに対して混乱を招かないよう、両者の関連性を明確にしなければならない」という決まりがある。そのため、新車を使用してしまうとダブルブランドによる広告として抵触してしまう可能性があるそうです。
また、CMを作る制作会社からすれば、腕時計のコマーシャルに最新のクルマを使用してしまうと視聴者がクルマに注目してしまい、宣伝するべき腕時計のインパクトが薄れてしまう可能性もあり、広告制作会社としては新車として販売されていない国産旧車やイメージの良いンヴィテージ輸入車を使っているというわけです。
さらに大人の事情として、起用する俳優さんが自動車メーカーとCM契約を結ぶ場合、契約条件として他社のクルマに乗ることができないという場合がほとんどで、苦肉の策として契約内容に新車で購入できない旧車ならOKという条件を結んでいる人も多いようです。
【まとめ】広告代理店による細かな配慮がCM起用車の旧車化を招いている
テレビドラマやCMに数多く登場する国産旧車やヴィンテージ輸入車。もちろんイメージ戦略としての演出もありますが、その裏にはテレビ局、ドラマの制作会社、起用される俳優・タレント、広告代理店が抱える大人の事情が絡み合い、複雑な制約の抜け穴として古いクルマが使われることも多いのです。何気なく見ているCMやドラマですが、そこに覚える違和感は「利権」と「忖度」が滲み出ていることなのかもしれません。