限定数はレースに出場するための条件のひとつ
消費者はいつだって「限定」という言葉に弱い。とくにクルマ好きなら、GTO(グランツーリスモ・オモロゲート)のような、レースに出場するための公認(ホモロゲーション)車両の限定車に目がない。そんなホモロゲートミートバージョンの代表車種をいくつか振り返ってみよう。
日産スカイラインGT-R NISMO(R32)
R32GT-Rの「NISMO」仕様は、1990年にグループAレースで戦うためのホモロゲーションバージョンとして500台限定で生産されたモデル。グループAのレギュレーションで、外観は市販状態からいじることができなかったため、NISMO仕様ではフードトップモール、フロントバンパーの開口部(ニスモダクト)、サイドステップ、リアスモールウイングを追加した。
エアコン、オーディオ、リヤワイパー、ABS、インタークーラーグリルは取り外され、約30kgの軽量化も計られた。タービンも耐久性重視のメタルタービンに変更されているが、レスポンスは標準のセラミックタービンの方が上で、ストリートでの使い勝手やフィーリングは、標準のGT-Rより劣っていた……。
ちなみに1991年に登場したN1仕様もあり、エンジンブロック(24U)やヘッドライトやブレーキローター(穴なし)などがNISMO仕様とは異なる。また1995年には、R33をベースにしたル・マン専用GTカー「NISMO GT-R LM」が作られているが、これはたった一台のみの製作で、イギリスにおいて一般車両として登録し、公認を取得。市販化はされていない。
日産スカイライン GTS-R(R31)
R32で「GT-R」が復活するまで、グループAレースを戦っていた800台限定のホモロゲーションモデルだ。大型ターボチャージャー・専用インタークーラー・等長ステンレス製エキマニなどを装着し、ベース車の190psから210psにパワーアップし戦闘力をアップ。
エアロパーツの後付けが許されないグループA規定に合わせ、R31のウリだった格納式フロントスポイラーを固定式に変更。リヤには大型スポイラーが追加された。イタルボランテ製のステアリングも魅力的!? グループAでは1989年に長谷見昌弘のリーボック・スカイラインがシリーズチャンピオンになっている。
トヨタ・スープラ ターボA(A70)
スープラ ターボAはトヨタがグループAレースで活躍するため、1988年に500台限定で送り込んできた一台。エンジンは1JZではなく3リッター直6の7M-GTEU。大型タービンや大型インタークーラーで武装し、エアフロレス仕様に変更。パワーは30psアップの270psにチューニングされている。フロントバンパーに「ターボAダクト」と呼ばれる三連ダクトがついているのが外観上の特徴。
トヨタ・セリカGT-FOUR RC(ST185)
こちらはST185の正統派ラリー仕様の限定車。1991年に国内では1800台限定で発売された。WRCには1992年にデビューし、フェラーリのF1ドライバーとして活躍中のカルロス・サインツJr.の父、カルロス・サインツが年間4勝を挙げ、シリーズチャンピオンに輝いている。
エンジンはメタルタービンや水冷式のインタークーラーなどを採用し、235psまでチューニング。エアインテーク・エアアウトレット付きの専用ボンネットが与えられ、フェンダーも40mmワイドになったブリスターフェンダーに。海外では、カルロス・サインツ・リミテッドエディションとして発売された(世界限定5000台)。
WRCでは通算16勝。1992年~1994年まで3年連続でドライバーズチャンピオンに輝き、1993年と1994年にはマニュファクチャラーズタイトルと合せダブルタイトルを獲得している。
三菱ランサーエボリューションI(CD9A)
WRCをギャランVR-4で戦っていた三菱。よりコンパクトなボディに強力なエンジンと4WDシステムを積むことが勝利につながると判断し、ランサーGSR1800にギャランVR-4のエンジンとドライブトレインを移植したのが、初代ランエボ=ランサーエボリューションIだ。
ホモロゲをクリアするのが目的だったので、当初は2500台限定だったが、3日で完売となり、さらに2500台が追加された。ギャランVR-4にも100台限定の競技ユーザー仕様となる「VR-4R」という限定車があったが、こちらはホモロゲモデルというわけではない。
メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューションII
最後に外車勢の代表として、「190E 2.5-16 エボリューションII」を紹介しよう。このクルマはDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)」に参加するためのホモロゲバージョンで、1989年にエボリューションI、そして1990年に500台限定でエボリューションIIが登場。エンジンはコスワースチューンのDOHC16バルブで、235psを発生する。
巨大なリヤウイング、ダイナミックなフロントスポイラー、迫力あるオーバーフェンダーで、ベンツの190ベースとは思えない存在感が魅力である。プラモデルを作ったことがあるという人も多いのではないだろうか?