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初の280馬力超えも初のレベル3自動運転も搭載! 消えゆくニッポンの宝「ホンダ・レジェンド」の歴史

高級車第1弾として誕生したのがレジェンドだった

 大企業になりながらもホンダがまだ新興メーカー扱いされていた1985年、フラッグシップ・モデルとなるレジェンドが発売される。ホンダは二輪では世界的でありながら、軽自動車から自動車メーカーとなって画期的なCVCCエンジンのシビックで存在感を高めた。シティやアコード、プレリュードなどで自動車メーカーとしての地位を確固たるものにしたなかで、次に参入したのが高級車。それがレジェンドだ。

 北米ですでにホンダの立ち位置は確保されていて、そこでさらに高級なブランドの登場が待たれていた。例えばGMにはいろいろなブランドがあるが高級担当はキャデラック。フォードも大衆車は販売していたが、高級担当はリンカーンだ。後発なのに日本メーカーで最初に北米に工場を作ったホンダは、ブランド名の重要性を認識していた。

 そして北米で「アキュラ」という高級ブランドを作るため、それにふさわしいモデルが必要だという認識から、当時ホンダと提携していた英国の当時のBL(ブリティッシュ・レイランド:ローバー)と共同で開発したのだ。高級車はただ高品質な大きいクルマだけでは成立しない。高級に詳しい知見を得るというのは賢明な判断だろう。

初代:ローバーとの姉妹車であった

 レジェンドはホンダ初となるV6エンジン搭載車で、ローバー825や820の姉妹車でもあった。特徴は3ナンバーボディによる、当時のホンダならではの伸びやかなスタイリングとC27A型のV6エンジンが魅力。途中追加された2ドア・クーペもあって、どこか都会的な魅力でホンダらしさを発揮した。

 日本初の運転席用エアバッグの採用や、久しぶりのターボとなるC20型ウイングターボの追加もあって、高級モデルでありながら走りも追求。他社と異なりFFのみながら、ホンダのフラッグシップとしての地位を一世代で確立する。発売当初から賞賛されたインテリアの質感はローバーから得た知見が生かされていると言われているし、優れた走行性能はホンダの技術の賜物だ。

2代目:流麗なスタイリングと最先端装備で魅了した

 1990年に登場した2代目は、F1ブームに沸く日本で大ヒットする。初代同様にFF車だが、ヒットモデルとなった初代アコード・インスパイア&ビガー同様にエンジンを縦置き。まるでFR車のようなスタイリングもあって、フラッグシップに君臨した。他社の高級車とは異なり、メッキ・パーツが少ないことも特徴で(オプションで設定された)、同時期に初代NSXが発売されたこともあり、ホンダの時代が到来した。

 エンジンは進化した3.2LのC32A型を搭載。運転席エアバッグに加えてABSやTCSといった当時の先進装備が備わっていたこと、そして2代目で廃止となってしまったが初代に続きラインアップされたクーペの存在感もあり、海外は当然ながら日本国内でもホンダの存在感の向上に貢献した。

 ホンダが日本で初めて装備したカーナビゲーション・システムもGPS受信ができるようになり、高性能に磨きをかけた。これまでのホンダは海外では一流メーカーではあったが、日本の四輪市場で考えるとあくまでも後発であった。しかし、レジェンドの登場で、国内でも四輪メーカーとしての立場を確立。ホンダ車を「バイク屋のクルマ」というオヤジどもを駆逐したのだ。

3代目:これまでとは路線変更した国産王道の高級車スタイルに

 3代目は1996年に登場。ここで残念なのがC35A型エンジンを搭載しながらも、スタイリングにホンダらしさが見られなかったことだ。初代や2代目はフロントグリルがスマートだったことに対して、大きくて偉そうに変わってしまった。レジェンドはある意味では日本車王道の高級車ではない洗練されたスタイルが魅力だったはずなのだが、3代目は他社と同様の高級車らしいスタイリングを纏って登場した。

 初代の持つ英国仕立てのインテリアや2ドアクーペがなくなったことも関係しているのか、ホンダらしくないコンサバなスタイリングでは、セダンが売れない時代にはきつい。

 自分のセンスの良さをアピールしたい層からは魅力的にみられないスタイリングとなったことで、急速に勢いを失ってしまう。また、ひとつ下のクラスであるインスパイアとの差別化もうまくいかず。もしかしたら、バブル崩壊によって原点回帰のような保守的なユーザーを獲得しようとしたのかもしれないが、結果的には上手くいかなかった。

4代目:最先端の4WD制御システムで走りに磨きをかけた

 2004年に登場した4代目は、排気量こそ同じ3.5Lながら軽量かつコンパクトになったJ35A型を搭載。先代とは異なり横置きとなったV6エンジンだが、最高出力300psを発揮し、ホンダ自慢のSH-AWDという前輪と後輪のトルクをコントロールすることでスポーティな走りを実現している。前輪ダブルウィッシュボーン式、後輪がマルチリンク式のサスペンションを採用し、後期型ではホンダ初となる6速ATを搭載するなど走りの面で訴求した。

 しかし、明らかに北米向けと感じさせるスタイリングは国産4ドアセダンにフォーマルさを求めるユーザーとは乖離してしまった。2012年に販売を終了し、2015年に5代目が登場するまで空白の期間が生まれてしまうのである。

5代目:自動運転技術も搭載し最先端を追求した最終モデル

 5代目は、日本向けはハイブリッドのみとなって復活。新開発のJNB型V6の3.5L直噴i-VTECエンジンに高性能モーターを内蔵した7速DCTを組み合わせ、車体後部にはふたつのモーターを内蔵したツイン・モーター・ユニットを搭載する。エンジンと合計3つのモーターを最適に制御するコントロールユニットと、高出力リチウムイオンバッテリーを組み合わせたシステム「スポーツ・ハイブリッドSH-AWD」で、走りを追求した。

 しかし見どころはほかにもあり、先進のホンダ・センシングを搭載した。これは歩行者への衝突回避を支援する世界初の歩行者事故低減ステアリングや、車線維持支援システム、路外逸脱抑制機能などが備わることで、優れた安全性を確保。マイナーチェンジでホンダ初の渋滞運転支援機能が追加されるなど、ホンダの技術をアピールするモデルでもあったのだ。

 そして2021年には、条件付き自動運転である自動運転レベル3を達成したホンダ・センシング・エリートが100台限定リース販売される。技術力をアピールしつつ一般使用での情報を収集し、今後の開発に向けた貴重なデータを蓄積することになる。その後2022年には販売を終了。5代の歴史に幕を下ろした。

 二極化が進むといわれる昨今。1000万円以上の高級車が売れているし、日本車では安いモデルや維持費の安い軽自動車が人気だ。ほかはSUVやミニバンで、レジェンドと同等のサイズや価格帯を求める方は輸入車ユーザーが多いのだろう。レジェンドの国産ライバルたちも、軒並み存在感が下がっている。6代目レジェンドが復活するときが来るのならば、その時代は日本が今よりも元気となった証となるだろう。

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