他社にはない独創的な商品を手掛ける少数精鋭の職人集団
日本の駆動系パーツメーカーがいくつもあるが、少数精鋭な職人集団としてアフターパーツ業界で名を馳せるのが岡山の「オーエス技研」。これまでに国産唯一の6速シーケンシャルミッションである「OS88」、機械式LSDの利きのよさはそのままに、低速コーナーで起こるタイヤの引きずりを抑制する「OSデュアルコアLSD」など、独創的な商品を幾多もリリースしてきた。
尖った駆動系パーツメーカーから脱却⁉ 商品ラインアップ拡大中
なかでもオーエス技研の原点であり、シンボル的存在である日産のL型エンジンブロックと組み合わせる、オリジナルのDOHC24バルブシリンダーヘッド「TC24」を開発/商品化したのは今から40年以上前。現在のような解析技術も精度の高い工作機械が存在しない時代に、自動車メーカーではなく小さな地方のビルダーが成し遂げたことはアフターパーツ業界を騒然とさせたことは想像に難くない。
当時は技術的な面を含めて量産化には至らず、9機の生産にとどまったが、2012年に最新技術を投入したリメイクモデルとして復活。コンプリ―トエンジンで570万円からという高額でありながら、現在も2年のバックオーダーを抱えるほどの人気だ。
こうしたこだわりが凝縮されたパーツラインアップにより、近年までオーエス技研=マニア御用達の硬派なパーツメーカーのイメージが強かった。だが、ここ数年は王道といえる独走のパーツ開発/販売はそのままに、カスタマイズユーザーの痒いところに手が届くパーツ開発やECサイトでの直販、オイルやアパレルなどにも商品展開を拡大しつつある。
そのため、一部ファンからは「日和った」「昔の尖がったイメージがやや失われた」という声もあった。だが、2月に横浜で開催された「ノスタルジック2デイズ」のブースでは以前と変わることなく、マニアックでインパクトのある車両/旧車用パーツが目白押しだった。
幻のオリジナルエンジンにクルマ+バイクのMIXエンジン展示
その筆頭に挙がるのが、オリジナルDOHCヘッドのTC24の弟分である4気筒板の「TC16-C1」のプロトタイプエンジンの展示だ。PB110型サニーエクセレントに搭載されたのはL18型ブロックをベースに、オリジナルのムービングパーツを使って2.1Lまで排気量をアップ、その上にオリジナルのDOHCヘッドをドッキングしている。燃料供給はウェーバーの50Φで、パワーはなんと250ps以上を出すという。
現在は本年度のヒストリックカーレースに参戦すべく、サーキットテストを繰り返して熟成を測っている段階。もちろんこれは市販化に向けてのテストも兼ねている。正式な販売は2023年以降となりそうだが、すでにオーダーが続々と入っており、争奪戦になることは間違いないだろう。
もう1台のクローズアップ車両はオーエス技研のチーフエンジニアである富松拓也さんが独自に製作したAE85。注目すべきはクルマのブロック+バイクのシリンダーヘッドを組み合わせる大胆不敵なハイブリッドエンジンだ。ブロックはAE85の3A-U(1.5L)で、ヘッドは富松さんが究極の燃焼室と絶賛するスズキのハヤブサ用である。
ボルトの穴位置やピストンサイズ/ピッチなどが異なるのでそのままの使用は当然不可だが、大技を駆使して完成エンジンとして成立させた技術力は高い。通称3A-Rと呼ばれるこのユニットは、馬力こそ未測定ながら10000rpm以上を許容する超高回転仕様とのこと。開発から走行テストまで、この魔改造レビンの詳細は富松さんのyoutubeチャンネルで公開中だ。
他社とコラボし点火系/排気系など新商品を精力的に開発!
主力のクラッチも、ディスクプレートを従来のメタルから純正に近いオーガニックタイプ変更し、これに軽量フライホイールを組み合わせた「OS-NNC」をブースに用意。380psを許容しながら半クラッチも使えて扱いやすく、レスポンスアップも期待できるので、純正リプロ品からチューニング初心者まで幅広く使えるアイテムとして人気が出そうだ。
また、現在力を入れているのが点火系アイテムで、2019年には旧態依然としていた市販のディストリビューターを現在の技術で一新した強化品をリリース。
今回はSR311のU20型やサニーのA型エンジンの試作品をお披露目するとともに、岡山の「アイテック技研」と共同開発で強化CDIの開発もスタートした。前述したサニーエクセレントのレース仕様に搭載し、テストを重ねている。
さらに、ハコスカ(3代目スカイライン)の排気パーツ(エキマニ、マフラー)を、チューニングパーツメーカーの「トラスト」と共同開発し展示するなど、今回のブースを見るとオーエス技研は駆動系以外のパーツを精力的に開発し、裾野を広げているのは確かだ。
「無いものを作る」の精神は今も昔も変わらない
ただ、闇雲に商品を出しているのではなく、いずれの機能部品も明確なコンセプトの下で時間をかけて開発が進められているものばかり。独創的なアイテムはそのままに、今のユーザ―ニーズに応える機能パーツも加えたというのが正解か。現役当時と変わることなく、継続的に作り続けられている部品が多い旧車の世界。オーエス技研はその閉塞したマーケットに風穴を開けるべく、即時の技術力でその裾野を広げているのだろう。創業当時から続く「無いものは作る」の精神は今も変わらず生き続けているのだ。