コンパクトかつ軽量なボディで走りも際立った
ちなみに前述のオレンジ色のカタログ名は“トロピカルオレンジ#052”といい、初代チェリーのキュートなスタイルに、じつに合った色だった。スタイリングはセミファストバックを採用した、コロンとした“カプセル・シェイプ”と呼ばれた。例の切れ上がったサイドウインドウは“アイライン・ウインドウ”と名付けられ、この同じデザインで4ドアと2ドアのセダンのほか、バンも設定があった。
ボディサイズは全長3610mm×全幅1470mm×全高1380mm(X-1は1375mm)とコンパクトで、車重さも610〜670kgと、今の時代から考えるとかなりの軽量だ。さらに1971年になるとクーペが登場。どことなくロータス・ヨーロッパを思わすシルエット(といっても車高はあそこまでは低くはなかったが……)のユニークなスタイルが印象的だった。オーバーフェンダーを装着したX-1・Rも設定され、レースシーンでも活躍をみせた。
2代目は上質さを追求していった
さらに1974年になるとフルモデルチェンジを受けて2代目に進化。車名もチェリーF-IIとなった。この世代は初代に対しセダンで比較すると全長が+215mm、全幅が+30mmと大幅に拡大。ホイールベースも60mm伸びた2395mmになったものの、全高は反対に30mm低められた。スタイリングは何となく初代のイメージを残しつつも、フロントグリルまわりのデザインでも明らかなように、当時のブルーバードUに寄せたようなやや上級志向となった。
インテリアも上位グレードのGLではインパネやステアリングホイールのスポーク部に木目を使うなどし、豪華な雰囲気を演出。装備では、スポットライト付きルームランプや、マジックテーブルと呼ぶ、テーブルや物入れとしても使えるアームレストを後席に用意するなどしている。クーペのハッチゲートには、パノラマウインドウと呼ぶサイドまで回り込んだ5mm厚の強化ガラスが採用された。日産のリッターカーとして、のちに登場するマーチのいわば先祖に当たるモデルがこのチェリーだったのだ。