GTウイングが一番効くのは、じつはブレーキング
コーナーの立ち上がりでリヤをグッと沈めて、リヤ駆動ならトラクションが増えて鋭い加速を……しそうだが、じつは一番GTウイングが効くのはブレーキング。減速で浮きがちなリヤタイヤを路面に押し付けることで、これまでよりもっと強くブレーキが踏めて、短い距離で止めることができるのだ。
コーナーの立ち上がりでも効果はあるが、速度も落ちているのでじつはそんなに効果は大きくない。リヤ駆動車でコーナー立ち上がりのトラクションが足りないからGTウイングの導入、という話はあまり聞かない。そこはサスペンションとLSDのセッティングがメインとなる領域だ。
高さマシマシ、後方マウントの方が効く
GTウイングの効果を高めるなら、取り付け位置は高いほうが有利。単純に低いほどキャビンの影響で風が当たらないからだ。「GRヤリス」では当時トヨタのWRCプロジェクトを率いていた元WRC王者のトミ・マキネンから、「リヤウイングによるダウンフォースがもっとほしい」と要請があった。ならばと、リヤハッチ後方の屋根の形状を下げてしまったという逸話があるほど。レギュレーションでウイングを高くできないなら、屋根を下げちゃえ理論である。
そして、位置は後方のほうがやはりキャビンの影響を受けにくいので効く。そこで生まれたのがスワンネック式マウントのウイングだ。これには下面にステーが無いので、効率よくダウンフォースが発生させられるメリットもあるが、羽をより後方にマウントできる狙いもある。そのふたつの狙いで現在のレースでは多く使われるようになったのだ。
最近のクルマでは、純正ウイング形状になってはいないが、フロア下がフラットになっているものが増えている。フロア下を整流すれば、抵抗を抑えつつ安定感を得やすいのだ。国産車では下面がフラットになったのはごく最近だが、1970年代から欧州車はフラットフロアなものが多い。それだけ下面の空力も重要なのだ。