アウトドアで少し不利になる人気SUVとは
アウトドアにうってつけなクルマの代表格がSUV、クロスオーバーSUVだ。走破性やアウトドアフィールドまでのロングドライブに対応する、走行中の快適性や安全性能が重視されるとともに、アウトドアの荷物の積載能力が問われる車種となる。
背高なミニバンほどの荷物の積載力は望めないにしても、ワゴンに匹敵するゆとりあるラゲッジルームを備えているはず……なのだが、それはすべてのSUV、クロスオーバーSUVに当てはまるわけではない。車種によってはボディサイズから想像するよりラゲッジルームの容量、そして実際の荷物の積載力が思ったほどではないこともあったりするのだ。付け加えるならば、例えば先代に対して新型のほうが荷物の積載性で劣ることもある。
ホンダ・ヴェゼル
その一例として、ホンダ・ヴェゼルが挙げられる。まずラゲッジルームの寸法を見てみると、人気爆発中の現行ヴェゼルは開口部地上高775mm~760mm(グレードによる/開口部段差なし)、フロア奥行き755mm、幅1010mm、最小天井高780mm。
一方、先代モデルは開口部地上高650mm(開口部段差50mm)、フロア奥行き790mm、幅1000mm、最小天井高830mmと、寸法的に先代が勝っているのである。実際、アウトドアの荷物とは関係ないが、ゴルフバッグ(全長1230mm)を積んでみると、先代モデルは斜めながら問題なく積めるのに対して、現行モデルは斜めに置いても積み込み不可。6:4分割の後席の片方を倒すアレンジをしないと、意外や意外、ゴルフバッグが積めない。
ラゲッジルームの高さ方向にしても、スタイリッシュさを演出する一因の低全高が災いして、現行モデルは先代より50mmほど低くなっているのだ。ちなみにラゲッジルームの開口部地上高は現行モデルのほうが90mm前後高くなっているが、これは最新の後突安全基準に合わせるためと、開口部とフロアの段差をなくし、より荷物の出し入れのしやすさを考えた結果と考えられる。
とはいえ、ヴェゼルの欧州プレミアムSUVに匹敵するカッコ良さ、存在感の理由のひとつが低全高にあるのだから、ラゲッジルームに「ゴルフバッグが積めない(もちろん、後席を格納すれば積める)」としても、アウトドアグッズの積載ならそれほど心配することはなく、許せる範囲だと思える。
マツダCX-8
国産SUV最大級サイズの1台であるマツダCX-8も、ある条件下において、ラゲッジルームはかなり狭い! と言わざるを得ない。そう、CX-8は3列シートのクロスオーバーSUVであり、その3列目席使用時に限っては、である。
3列目席使用時のラゲッジルームの寸法は、開口部地上高800mm(高い!)、フロア奥行き500mm、幅1460mm、最低天井高725mm。幅方向はさすがにたっぷりだが、実際の荷物の積載力により大きく関わる奥行きは、5ナンバーサイズのコンパクトSUVとして人気のトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーの730mmにも及ばない。
フル乗車でアウトドア……なんていうのは、荷物の積載力からすれば不可能だ。もっとも3列目席をフラットに格納すれば、フロア奥行きは一気に1230mmまで拡大するから、国産SUV最大級のラゲッジルームの容量、積載力が確保されることになる。
つまり、2列使用、最大5名の乗車でのアウトドアなら文句なし。家族や仲間総出でフル乗車して、単なるホテル宿泊とは違い、一気に荷物が増えるアウトドアへ繰り出す……といった楽しみ方は諦めるしかないだろう(ルーフキャリアを活用すればある程度は解決するが)。
マツダMX-30
マツダのクロスオーバーSUVは下からCX-3、CX-30、MX-30、CX-5、CX-8……と揃うのだが(PHVのCX-60も登場予定)、コンパクトカーの部類に入る、旧デミオベースのCX-3は“はなから”大容量のラゲッジルームなど期待しないはず。
そうなると、見た目に対して「思ったよりラゲッジスペースが狭い」CXシリーズの代表格!? が、BEV(電気自動車)のMX-30だ。全長、全幅、ホイールベースともにまったく同じ(全高のみMX-30のほうが10mm高いだけ)のCX-30とラゲッジスペースの寸法を比較してみると、CX-30は開口部地上高730mm、フロア奥行き890mm、幅1000mm。
一方、MX-30は開口部地上高740mm、フロア幅1000mmは同等ながら、BEVゆえのパッケージングから、フロア奥行きは800mmと、荷物の積載性に大きく関わる部分がCX-30に比べて90mmも狭くなってしまっている。
しかも、BEVに不可欠な充電コードがラゲッジルームの床下に収まらず、ラゲッジフロア右横にバッグINで固定されてドーンと置かれているため、ラゲッジルームの横幅に制限が出てしまうところも惜しまれる。
とはいえ、そもそもMX-30の一充電走行距離はWLTC総合モードで256kmであり、試乗経験では実走行距離180km前後。同走行距離のホンダe同様にオールラウンダーではなく、シティコミューターBEVクロスオーバーモデルととらえるのが正解だ。
航続距離と荷物の積載力に加え、電動車にしてアウトドアで活躍するAC100V/1500Wコンセントも持たないため、CX-30(やCX-5)とは違い、アウトドア向きとは決して言えないクロスオーバーモデルということになる。