スポーツ性を求めない車種への高性能タイヤ装着にも疑問符が……
スポーツカーやスポーティなクルマが、たとえEVやPHEVになっても、車内で運転者の気分を盛り上がらせる音の演出は可能だ。クルマに興味のない車外の歩行者や沿道の住民にとって、たとえフェラーリの排気音であっても聞きたくない人はいるし、信号待ちなどアイドリングしているフェラーリの排気音がいい音色だとは思えない。やはり高回転へ回り切って澄みわたった排気音こそフェラーリの持ち味ではないか。同じことは、ポルシェや、GT-Rなど、ほかの高性能車も同様だろう。
タイヤはスポーツカー仕様のタイヤほど騒音は大きくなる。トレッドデザインがグリップ力優先で、大きなブロック形状となるためだ。タイヤ騒音を小さくするには、細かなトレッドデザインが向いている。その意味で、乗用車やSUVにまで、スポーツ志向のタイヤを装着するような商品性は、今後考えものとなるだろう。SUVでサーキットも走れることは、ひとつの魅力ではあっても本末転倒だ。本来の商品性に見合った本質的な商品性で消費者を魅了する重要性を見直す機会になるだろう。
クルマを一律に規制することで商品性を損なう危うさも拭えない
その点において、台数の限られるスポーツカーもEVにすべきかとの疑問もある。いまの環境問題は、100年前にはほとんど数の限られたクルマが世界で13億台にもなったことで起きている。富裕層が増えた今日、スポーツカーの販売台数は増えているので、環境への影響は無視できないものの一般的な量産車とは台数の桁が違うのも事実であり、別の価値観を持って存続する意味はあるのではないか。
鉋(かんな)を掛けるように、すべてをひとつの規制で縛るのではなく、数量と個別の価値を精査しながら、規制対象を区別する思考が大切だ。販売台数や環境への負荷を合理的、数値的に正しく吟味し、世に問うてこなかったことが、個性や商品性を度外視した一律での規制につながってしまうのではないだろうか。