行き着いたルーツはキングオブロックンロール
さらに調べていくと、そんな多くのピンクのキャデラックの原点が見えてきた。伝説のロック歌手、エルヴィス・プレスリーが乗っていたのがピンク色の1955年式キャデラック・フリートウッドだったのだ。
ちなみに50年代半ばのキャデラックに、純正でピンクのボディカラーがラインアップされていたのは1956年式と1957年式のみで、1955年当時には存在していなかった。そのため青いボディに黒いルーフだった個体を塗装業者によって、「エルヴィスローズ」と名付けられたピンクでリペイントしたものなんだそうだ。
この車両は現在グレイスランド(エルヴィスの生家でアメリカの歴史建造物に指定されている施設)で保管されている。エルヴィスの大ファンである小泉元首相が首相在任時の訪米で、ジョージ・ブッシュ大統領とともにここを訪れた際、キャデラックを見学している映像が流れ話題となった。
ピンクキャデラックは富めるアメリカを象徴するアイコン
ところがひとつ疑問が残る。ピンクのキャデラックというと、のちの映画なども含めてなぜか1959年式のコンバーチブルが多いという点だ。前述した通り、エルヴィスが乗っていたのは1955年なのだが、「PINK CADILLAC」で画像検索をしても、ヒットするのは1959式のコンバーチブルばかり。
これは推測でしかないのだが、やはりもっともテールフィンが成長し、栄華なスタイルを極めた1959年式に、ピンクという浮世離れした色がかけ合わさることで、富めるアメリカのアイコンとして「ピンクのキャデラック」=「1959年式のコンバーチブル」というイメージが出来上がっていったと思われるのだ。
ちなみに1959年式には淡いピンクパープルのメタリックは存在するものの、ローズピンクは存在しない。つまり現在あるピンクの1959年キャデラックは、基本的にエルヴィスをオマージュしたカスタムペイントということになる。
話は最初に戻るが、おそらく宝田さんは1955年のエルヴィス・プレスリーの人気と彼のピンクキャデラックを知った上で、さっそく翌1956年にピンクのキャデラックを購入したと思われる。当時のトレンドにとても敏感な人物であったことがうかがえるのだ。