また一緒にバイクで走るという夢を
世界で活躍したレーシングライダー青木三兄弟の長男・青木宣篤選手と三男・治親選手のふたりが立ち上げた一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が続けている活動「パラモトライダー体験走行会」が、国内各所で定期的に開催されている。
これは、事故などで身体に障がいを抱えてしまってオートバイを諦めた人に再び乗ってもらい、バイクに乗る趣味を一緒に楽しんでいけるように、と企画されたものだ。2020年からスタートし、多くの障がい者にバイクに乗る喜びはもちろん、新たな希望や目標を提供する場にもなっている。
4月6日(水)に千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。今回、7名の障がい者がエントリーし、彼らを支えるボランティアスタッフ、そして新規参加を希望する見学者も含めると、40名を超える参加者が集結した。
参加者すべてがすでに走行を体験した経験者ということもあって、通常行れているステップアップの練習走行はスキップとなり、全員が袖ケ浦フォレストレースウェイのコース走行から開始することとなった。
さらに、SSPの仕立てたハンドドライブ用車両も通常の倍となる4台を持ち込み、4台それぞれにボランティアスタッフがついた。先導車両も含めると、同時に7台がコース上を走るというオペレーションで行った。今回は4回のセッションで合計150分の走行枠を用意したが、その走行ペースも参加者に合わせて、ということでこれまでよりも若干速め。それぞれが走行を楽しんだ。
29年ぶりに一緒に走った
また、初の試みとなったのが、プロライダーが先導する車両とは別に、一般健常者がパラモトライダーと一緒に走行をするというもの。参加した長田龍司さんから「昔のバイク仲間と一緒に走行をしたい」という希望があり、SSPがこのリクエストに応えての実施となった。
参加者の長田さんは17歳のときにバイクの単独事故で胸髄Th12、腰髄L3.4の脊髄損傷を受けてしまっている。その彼と、当時走り屋のチームで一緒に走っていた先輩というのが、今回一緒に走行をした小幡敏治さん。事故後もずっと支えあってきたということで、一緒に走りたいというのがふたりの夢だった。
ふたりが一緒に走るのはじつに29年ぶり。この日のために小幡さんは30年前に作ったというチームトレーナーを引っ張り出してきて、革ツナギの上から着て走行に参加した。
小幡さんは「当時は、自分の周りで立て続けに事故があって、(長田さんの事故を受けて)自分もバイクを降りようかと思ったこともありました。昨年、長田さんが事故後初めてバイクに乗ったSSPの体験走行会にも見学に行ってました。それでまた一緒に走りたいと思い、今日ついに一緒に走ることができて良かったです。(長田さんの走行については)普段乗っていないのに、ずいぶんとうまいな、と思いました(笑)」
「あのころのことを思い出す」という長田さんとともに「当時の仲間がまだいるので、そんなメンバーと一緒に走れたら最高ですね」と語ってくれた。
SSPでは、今後も参加するパラモトライダーの友人に限定し、パラモトライダーのリクエストによって一般参加者も受け入れるとしている。ただ、パラモトライダーひとりに対して参加は2名までとなる。
バイクは持ち込み(排気量250cc以上)で、きちんと整備された車両であること。ライダーはサーキット走行にふさわしい装備を準備できること、といった条件が課される。走行に関しての誓約書の提出、寄付金というカタチで、走行費に代わる費用負担を依頼する。
次回のSSPパラモトライダー体験会は5月23日(月)に、埼玉県にあるファインモータースクール上尾で開催となる。