レース用の高出力とそれに見合った耐久性がある
第二世代のスカイラインGT-Rの心臓部「RB26DETT」はGT-Rのため、さらに言えばグループAレースで勝つために作られた専用エンジンだ。いまなお多くのユーザー、多くのチューナーを虜にしている名エンジンと言える。
RB26が名機となった一番の要因は、グループAレースのレギュレーションがほとんどのパーツを量産エンジンから交換できなかったため、レース用の高出力とそれに見合った耐久性をあらかじめ盛り込んで設計する必要があったからだ。
一次振動と二次振動を同時打ち消せる直6レイアウトを採用
日産はインターTECでフォードシエラなど欧州の強豪に勝つために、当時の富士スピードウェイを1分30秒以下で走れるパフォーマンスが必要と計算。そのためにはパワーウェイトレシオ2.4kg/ps以下が目標で、レース仕様で525ps以上が条件とされた。それだけ高いパフォーマンスを秘めたエンジンが、1980年代中盤の日産にあるわけがなく、直6のRB24をベースにほぼ新設計のRB26の開発が始まった。
当初はV6のVG30をベースにする案も検討された。だが、V6ではターボチャージャーをはじめとする排気系の取り回しがスペース上厳しいので、早い段階で直6に絞られたという経緯がある。
このころ、直6のレーシングエンジンは、BMWと日産くらいしかなかった。それでも各気筒の爆発間隔を三等分(120度ずつ)にして、一次振動と二次振動を同時に打ち消せる直6レイアウトを採用したのが、RB26を名機にした第一の理由となる。RB26は直6だったからこそ振動の問題がなく、高回転化が可能になり力強くスムースな気持ちのいいフィーリングを実現できた。
鋳鉄ブロック
次はその直6エンジンを鋳鉄ブロックで作ったこと。ふたりのドライバーが交代で走るセミ耐久レースのグループAで、600psのパワーを維持するには頑丈なブロックが欠かせない。RB26は、RB24のブロックをベースに各気筒の側面に補強リブを追加。ヘッドボルトもM11からM12にサイズアップし、強度アップしている。
アルミではなく鋳鉄ブロックにしたことで、チューニングカーでは1000psオーバーすら可能になった(当時、RB26以外で1000psに耐えられるベースエンジンはなかった)。その上、レースでの使用を考え、さらに強度を上げた24Uブロック(N1ブロックのこと。上記の写真はノーマルブロックの05U刻印あり)も投入。RB26は直6なのでエンジン長が621mmと長いが、それでもシリンダーブロック上面の歪み限界値は0.1mmという高精度・高強度で作られている。この丈夫な鋳鉄ブロックこそ、RB26の命といってもいい。
6連スロットル
6連スロットルもBMW Mシリーズの直6と共通する点だ。独立スロットルにすると、スロットルバルブとインマニまでの距離が短縮できるので、アクセル操作に対するレスポンスがよくなる(全開時だけなら、大口径のシングルスロットルをつけても変わらない)。
開発当初、6連スロットルにするとアイドリングが3000rpmになると懸念されたが、リンケージにピロボールを使い、ガタや気筒間のバラツキを防ぎ、微少なストロークでも精度が出せるようにして採用が決まった。