「このキャビンは、天まで広い。」
あらためてスパイダーのカタログを見直すと、このクルマが「上級仕様」だったこともわかる。モモ製ステアリングホイール(当時、市販品でも人気のあったコブラIIだ)や、プリセームと呼ばれた人工皮革を表皮にしたバケットシートなども備えていた。なお搭載エンジンは660ccの12バルブEFIターボで、64ps/9.4kg−mの性能を発揮、トランスミッションには5速MTと3速ATが用意された。
さらにフロントビスカスLSD、前輪ベンチレーテッドディスクブレーキも標準装備。現役当時に試乗したときの記憶はうっすらとしたものながら、その時代のオープンボディだったから、オープン/クローズに関わらず走行中にボディ、フロントスクリーン、ステアリングコラムのワナワナを絶えず実感したこと、その状態でアクセルを踏み込むと、かなり強烈な加速感に見舞われたことなど……が筆者の記憶のなかにはある。
じつは連綿と続いていたダイハツのオープンへの挑戦
ところでダイハツのオープンタイプといえば、1970年の「フェローバギィ」もあった。残念ながらその年の東京モーターショーのパンフレットが手元になく、筆者の頭にUSBポートもないので、記憶のなかの赤/白2トーンのショーカーの姿を出力してお見せすることはできない。だが、VWがビートルのシャシーにFRPボディを被せたサンドバギーを造ったのと同様、ダイハツは当時の軽いピックアップトラックのフレームを利用してこのバギィを仕立て、何と販売までしていたのだった。
ほかにダイハツといえば60年代の「コンパーノ(スポーツ)スパイダー」が有名。写真は手元にある1969年の東京モーターショーのパンフレットだが、「“通”が日本一の折り紙をつけた本格派」、「青空のなかをかけぬける2+2ではない本格的な4座、総会な排気音、幌の着脱は30秒」などと紹介文が載っている。
もう1台、第26回東京モーターショー(1985年)のパンフレットに載っていたのが、参考出品車、「ミラ・カブリオレ」だ。こちらは市販化はされなかったが、まさにVWゴルフ・カブリオをスケールダウンさせたようなスタイリングは、今見てもあながち非現実的ではなく、実現されてもよかったなぁ……と思わせられる1台だ。