ポルシェが開発したターボエンジンとクワトロ・システムの合体
RS2の大きなポイントは、ポルシェで開発した直列5気筒のツインカム・ターボエンジンを搭載していることです。直列5気筒のガソリンエンジン自体は、1976年に登場したアウディ80の兄貴分となるアウディ100に世界初搭載されていて、100の弟分で、ベースモデルとなるA80(正確には5気筒モデルはA90を名乗っていましたが)にも搭載されていました。
そして直5をターボで武装したエンジンも1980年にアウディ100の上級モデル、アウディ200に搭載されていたので、そのメカニズム自体に驚かされることはありませんでした。しかしポルシェが手掛けたエンジンは一味も二味も違っていました。
単純に出力データだけ見ても、アウディ80に搭載されていた直列5気筒エンジンは、チューンの差によって115ps~170psだったのですが、RS2に搭載されていたのは2226ccの直列5気筒ツインカム20バルブにインタークーラー付きターボを組み合わせたユニットで、最高出力は315psにも達していました。ベースモデルに比べて、2倍から3倍近くのハイパワーを与えられたことになります。
このパワーに対して気になる車輌重量もベースモデルが1190kg~1430kgであったのに対してRS2でも1595kgに過ぎませんでしたから、そのパフォーマンスは明らかに充分以上でした。さらに付け加えるなら、個人的にはインプレッションしたかどうかも記憶にないので、評価する術はないのですが、試乗した知人からは、ドライブフィーリングには、荒々しさはなく上質なものだったと聞いています。
そこにはアウディが得意としているフルタイム4WDを組み合わせながら、スポーツ性を強調するのではなく、マイルドなフィーリングに仕上げたのだろうと推察されます。やはり餅は餅屋、クワトロはアウディに、ですね。
もうひとつハンドリングに関しては、ポルシェで施したボディ補強が効いているのでしょう。アウディでホワイトボディを製作して塗装行程まで終え、ポルシェに運んでボディ補強と加工組み立てを行うという、ある意味二度手間を掛けて作られていますが、そのメリットを最大限に生かして完成させた、と言っていいでしょう。
パフォーマンス以外でも、ポルシェが仕上げた証拠が数多く残っています。ポルシェ911(993モデル)から転用されたドアミラーや、真紅に塗られたブレーキキャリパーに刻まれたPORSCHEの文字があります。
ちなみにブレーキに加えてサスペンションもポルシェが設計し、大幅に手直しされています。ボンネットを開けるとエンジンのカムカバーには20V turboの文字が浮かび、インテークのエアタンクにはpowered by PORSCHEの文字が誇らしげに刻まれています。やはりポルシェが手掛けたカズタマイジング・スポーツワゴンと評すべきでしょう。