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探してみると「PORSCHE」のロゴ! バカッ速ワゴンの「アウディRS2」って何もの?

ポルシェが手掛けたカズタマイジング・スポーツワゴン

 かつて1990年代に、一大ブームとなったクルマがステーションワゴン。国産車では4WDを武器に、スキー・エキスプレスの王様とされたスバル・レガシィと、お洒落なクルマとして人気を呼んだホンダ・アコード・ワゴンが双璧とされていますが、海外ではスポーツワゴンも人気を呼んでいました。その王者と呼べるモデルがアウディRS2。今回は、スポーツカーの王者とされるポルシェが開発したアウディのスポーツワゴン、RS2を振り返ります。

お洒落なイメージで人気を呼んだアウディのコンパクトモデル

 個人的な思い込みもあるのですが、アウディにはお洒落なイメージが漂っています。「子どもを保育園に送っていくのに、旦那さんが使っているベンツのSクラスでは嫌味だから、洒落た奥さまはアウディ80で送っていく」。そう聞かせてくれたのは同業の先輩だったか、それとも8歳年上の兄貴だったか……。今となっては記憶も定かではないのですが、「最近は奥さんもベンツのEクラスで送っていくんだって」、とも聞いたような気もします。

 まぁそんな与太噺はさておき、アウディがお洒落なクルマとの説は、多くの共感を呼ぶと思います。そしてその代表モデルが80からA4へと続く一連のコンパクトモデルだということも、十分納得できる論になっています。

 その一方で世界ラリー選手権(WRC)での、クアトロの縦横無尽な活躍から、アウディは力強いクルマというイメージも否定できません。最近のSレンジやRSレンジは、間違いなくそちらの系統ですが、じつはそのトップバッターとなったのが、お洒落なアウディの代表、80アバントをベースにしたRS2だったのです。

 アウディRS2がデビューしたのは1993年のフランクフルトショーでした。Porsche Typ 2862のサブネームが示す通り、RS2はポルシェで開発されたコンプリートカー、あるいはカスタマイジングカーです。自動車メーカーが傘下のチューナーやパーツメーカーといったスペシャリストに開発を依頼するケースは少なくありませんが、カーメーカーがほかのカーメーカーに開発を依頼するというのは稀なケースです。

 ただしポルシェはスポーツカーメーカーであると同時にクルマの設計開発を手掛けるデザイン事務所でもあり、メーカーとして名乗りを挙げる以前はデザイン専業だったことを忘れるわけにはいきません。彼らの最初の仕事はヴァンダラーの2Lカブリオレの設計開発でしたし、次なる仕事もNSUの小型乗用車の設計開発でした。

 さらにアウディRS2の開発を始める直前には、メルセデス・ベンツからの依頼で500Eを共同開発していました。そしてポルシェがアウディRS2の開発に取り掛かったところ、ベンツサイドからは「(ベンツと開発契約を結んでいた期間中に)何の相談もなく他メーカーの仕事を始めた」とクレームがつけられた、とか裏話は喧しいのですが、そのことはRS2とは直接関係ないので、今回は割愛して、ここからはRS2のハードについて紹介していきましょう。

ポルシェが開発したターボエンジンとクワトロ・システムの合体

 RS2の大きなポイントは、ポルシェで開発した直列5気筒のツインカム・ターボエンジンを搭載していることです。直列5気筒のガソリンエンジン自体は、1976年に登場したアウディ80の兄貴分となるアウディ100に世界初搭載されていて、100の弟分で、ベースモデルとなるA80(正確には5気筒モデルはA90を名乗っていましたが)にも搭載されていました。

 そして直5をターボで武装したエンジンも1980年にアウディ100の上級モデル、アウディ200に搭載されていたので、そのメカニズム自体に驚かされることはありませんでした。しかしポルシェが手掛けたエンジンは一味も二味も違っていました。

 単純に出力データだけ見ても、アウディ80に搭載されていた直列5気筒エンジンは、チューンの差によって115ps~170psだったのですが、RS2に搭載されていたのは2226ccの直列5気筒ツインカム20バルブにインタークーラー付きターボを組み合わせたユニットで、最高出力は315psにも達していました。ベースモデルに比べて、2倍から3倍近くのハイパワーを与えられたことになります。

 このパワーに対して気になる車輌重量もベースモデルが1190kg~1430kgであったのに対してRS2でも1595kgに過ぎませんでしたから、そのパフォーマンスは明らかに充分以上でした。さらに付け加えるなら、個人的にはインプレッションしたかどうかも記憶にないので、評価する術はないのですが、試乗した知人からは、ドライブフィーリングには、荒々しさはなく上質なものだったと聞いています。

 そこにはアウディが得意としているフルタイム4WDを組み合わせながら、スポーツ性を強調するのではなく、マイルドなフィーリングに仕上げたのだろうと推察されます。やはり餅は餅屋、クワトロはアウディに、ですね。

 もうひとつハンドリングに関しては、ポルシェで施したボディ補強が効いているのでしょう。アウディでホワイトボディを製作して塗装行程まで終え、ポルシェに運んでボディ補強と加工組み立てを行うという、ある意味二度手間を掛けて作られていますが、そのメリットを最大限に生かして完成させた、と言っていいでしょう。

 パフォーマンス以外でも、ポルシェが仕上げた証拠が数多く残っています。ポルシェ911(993モデル)から転用されたドアミラーや、真紅に塗られたブレーキキャリパーに刻まれたPORSCHEの文字があります。

 ちなみにブレーキに加えてサスペンションもポルシェが設計し、大幅に手直しされています。ボンネットを開けるとエンジンのカムカバーには20V turboの文字が浮かび、インテークのエアタンクにはpowered by PORSCHEの文字が誇らしげに刻まれています。やはりポルシェが手掛けたカズタマイジング・スポーツワゴンと評すべきでしょう。

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