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ドアハンドルにスタンガン! 煙幕放出! リアルボンドカー級防弾仕様のフェラーリやアストンマーティンが存在した

アメリカのアドアーマー社が手がける防弾スーパーカーたち

スピードこそ最大の防御!? 銃の国の防弾仕様車

 世界各国のVIPや富豪が犯罪から身を守るための「防弾仕様車」。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドでは、カタログモデルとして防弾仕様をラインアップしていたりするが、装甲をマシマシにするため、大重量となるのが一般的だ。

 ところがアメリカで防弾カスタムを手がける「アドアーマー(AddArmor)」社では近年、「アウディRS7」、「フェラーリ458スペチアーレ」、そして今年3月には「アストンマーティン・ヴァンテージ」といった、スーパースポーツカーの防弾仕様を立て続けに発表。今どきの防弾装甲の進化ぶりを見てみよう。

スモークや催涙ガスをばらまける「アウディRS7」

 自由の国アメリカ。建国以来の歴史も背景にあり、誰でも銃を所持できることもまた「自由」の重要な要素とみなす人が多いというのも、忘れてはならない側面だ。それゆえ銃を用いた犯罪はいまだに多い、銃社会でもある。

 ワイオミング州に拠点を置く「アドアーマー」社は、クルマの防犯・防弾カスタムに特化した会社。創立者でCEOのピート・ブレイバー氏は米軍特殊部隊の指揮官出身という経歴だ。同社ではこれまで、キャデラック・エスカレードやメルセデス・ベンツGクラスのような、もともとヘビーデューティなクルマの防弾カスタムを中心に行っていたのだが、ここ数年、新機軸を求めてスーパーカーの防弾仕様を続々と発表している。

 その第1弾が、2019年に発表した「アウディRS7」の防弾仕様車だ。防弾レベルは欧州標準化委員会(CEN)が定める「B4」規格に相当し、拳銃から発射された弾を防ぐことが可能。しかもそのための車両重量の増加を200ポンド(約90kg)以下に抑えているのがポイントだ。

 ボディパネルに挿入されたのは、従来の防弾スチールの10倍の強度をもつというポリカーボネート複合材。ウインドウはポリカーボネートと防弾ガラスを多層に重ねたものを採用している。ベース車両であるアウディRS7スポーツバックのエンジンは4.0L V8ツインターボで最高出力605psだが、防弾仕様では760psまでチューンアップされているので逃げ足にも不安なし。

 さらにRS7ではスパイ映画さながらのギミックが多数用意されており、パトランプを光らせ、警報サイレンを鳴らし、ドアをこじ開けようとする悪漢にはハンドルから電気ショックを与え、催涙スプレーや煙幕をまき散らして逃げることができる、至れり尽くせりの仕様なのだ。

防弾でも軽量にこだわった「フェラーリ458スペチアーレ」

 続いて2020年にアドアーマー社が発表したのは、イタリアが誇るスーパーカー「フェラーリ458スペチアーレ」だ。こちらもB4規格の防弾性能を備え、ポリカーボネートの複合材をさらに進化させて重量増はわずか156ポンド(約70kg)。大人の男性ひとりが増えた程度であり、さらに4.5L V8エンジンは605psから40psアップへとチューニングされている。

 また、こういったスーパーカーは売却時に防弾カスタムが評価減となる可能性もあるが、アドアーマー社の防弾パッケージはすべて取り外してオリジナル状態に戻せるのだそうだ。

「ケブラー」採用で強化された「アストンマーティン・ヴァンテージ」

 そして今年3月に発表されたのは、ボンドカーのイメージも強いイギリスの雄、「アストンマーティン・ヴァンテージ」だ。軽量にこだわったフェラーリから一転して、こちらは防弾性能のさらなる強化が図られている。

 フロントウインドウとドアウインドウは防弾ガラスを使用し、ルーフと燃料タンクまわりには爆風に耐える強化スチールを採用。フロントまわりとドアには、防弾チョッキにも使われるアラミド繊維の一種「ケブラー」を採用して、重量増は450ポンド(約204kg)となっている。4.0L V8ツインターボは503psのままだが、サスペンションは重量増に応じて強化されている。

 防弾ガラスは5mの距離から44マグナムや9mmパラペラム弾を撃ち込まれても完全に防御可能。外から見た限りでは通常のヴァンテージとの違いがわからないが、しいて言えば、リヤのエキゾーストパイプは異物を入れられないようにメッシュで覆われている。タイヤはランフラットなので、銃で撃たれてもそのまま走れる。

 また、RS7に搭載された数々の機能のなかから、車外からの侵入を防ぐドアハンドルへのスタンガンが採用されている。

 これらの防弾仕様カスタムの料金は3万2500ドル(約410万円)からで、顧客の要望に応じて防弾レベルもB4からB7まで増強できる。アドアーマー社のピート・ブレイバーCEOは「このヴァンテージに軽量アーマーを組み込むのは私たちにとって一番重要なチャレンジでした。なぜなら、公道での危険な状況において、スピードこそもっとも貴重な資産だからです」と語っていた。

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