支える方もラクなクルマであればお互いにハッピー
高齢の両親など、クルマに乗せ降ろしする際に介助が必要なケースで、一見、介助されるほうが乗りやすく、降りやすいクルマ……という視点でクルマを選びがち。だが、実際には介助されるほうだけでなく、介助するほうにとってもラクなクルマがいいに決まっている。介護、介助が必要な時期が長く、機会が多ければ多いほど、そこが重要になってくる。
介助者を乗せやすいクルマは、まず、ミニバンやプチバン、スーパーハイト系軽自動車などの両側スライドドア車で、フロアが低く、つかみやすい位置にアシストグリップがあることが第一条件。さらに、介護者が乗車してからシートに腰を落としやすく、また立ち上がりやすい、乗降時の腰の移動量が最小限で済む、フロアに対して後席が高めにセットされているシート位置(ヒール段差が高い)であることも、じつは大きなポイントとなる。
一方、介助する方としては、当然リヤドアの開口部が広く、フロアが低いところまでは介助される方と同じだが、室内高が高く1-2列目席はスルー、または運転席から後席への車内移動が可能だとよりラクで便利だ。というのは、目的地に着いたとき、車外に出ることなく後席に移動でき、介助される人のサポートや降車準備ができるからである。
大きな運転席スライドなどを備えたダイハツ・タント
そうした介助される側、する側にとってうれしい代表格の1台が、スーパーハイト系軽自動車のダイハツ・タントだろう。助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドアは、助手席を前出しすることでただのスライドドア車を圧倒する広大な乗降空間、とくに幅方向(間口)のゆとりがあり、要介されるほうもするほうも楽々。
しかも、世界初の運転席最大540mmのロングスライドシート(Pレンジ時のみ機能し解除スイッチ操作の必要あり)を、最大380mmの助手席スライドとともに採用している。スーパーハイト系軽自動車だけに室内の天井が高く、狭い1-2列目席スルー空間を通らずとも、運転席から後席にサッと移動できるのだから、サポートカーとして文句なしと言っていい。
つまり介助者を乗せたあと、車外に出ることなく、車道側回り込むことなく、運転席への移動が可能なのだ。雨の日、交通量の多い道での便利さや安全性も高まるということだ。合わせてクルマに戻った際、スライドドアが自動でオープンする、軽自動車初のウエルカムオープン機能(要予約操作)も、介助する側にとっては便利そうだ。
助手席側が大きなスライドドアになっているトヨタ・ポルテ
タント同様にBピラーレスで、介助のしやすさに優れているスライドドア車として、今では中古車のみとなってしまうもののおすすめなのがトヨタ・ポルテだ。助手席側に大開口ワイヤレス電動スライドドアを持つハイトワゴンであり、スライドドアの大開口(とくに幅方向)、室内天井の高さもたっぷり。介助されるほうも、するほうも、スライドドアからの乗降は楽々そのものだ。
もっと言えば、ポルテのスライドドア部分のフロア地上高は、ノンステップバスの乗降時と同じ300mm。これは世界の乗用車のなかでもっとも低い部類で、乗降時の足運びのしやすさにもメリット絶大だ。
もっとも、ホンダNシリーズの商用版であるN-VANも助手席側Bピラーレスだが、後席のシートは極めて簡易的なものだから、高齢の両親を快適に乗せてあげるような使い方には不向きと言っていい。Bピラーレス車ならなんでもいいというわけではないのである。