スポーツカーから軽自動車までこぞって採用した脱着式ルーフトップ車たち
クルマファンなら、一度は聞いたことがあるタルガトップ。この“タルガ”は、1965年9月のフランクフルトショーで発表された“0シリーズ”と呼ばれた最初のポルシェ911をベースに仕立てた、オープンモデルに与えられた名称だ。オープンボディの補強と安全性の確保のためにロールバーを設けたもので、ポルシェが活躍を見せたレース、タルガ・フローリオと、地中海の温暖なイメージをオープンに重ねての命名だった。
ちなみに当初のモデルは、折り畳み式のソフトトップルーフで、リヤウインドウはジッパーで脱着可能なビニール製が使われた。いずれにしても当時ポルシェが示した“安全なオープンカーの手本”だったわけで、以降も、ポルシェ914に採用したほかフィアットX1/9などが同様の方式を採用している。
ルーフをエンジンルームに格納できた初代NSX
一方で日本車でも直接タルガトップと謳わないまでも、同様のオープンスタイルを実現していたクルマがあった。ホンダのNSX-T(タイプT)はそのなかの1台で1995年のマイナーチェンジを機に登場した。オールアルミ製ルーフは8.5kg(奇しくも最初の911タルガのルーフと同重量だった)と軽量で、Aピラーを4.5mmほどウインドウ面から盛り上げたり、ルーフレール部をわずかに反らせた形状とし、風の巻き込みを低減させるなど、日本車らしい細かな配慮が盛り込まれていた。
ルーフはリヤキャノピー内に格納させるために、エンジンルーム内のエアクリーナー形状を変更してスペースを確保するといった技も用いられていた。
スープラやCR-Xデルソルもデタッチャブルトップを採用
スポーツモデル系ではトヨタ・スープラにも初代(A70)、2代目(A80)に“エアロトップ”の名でデタッチャブルトップが設定されていた。A70のエアロトップのカタログには“ルーフの脱着は専用の工具で行なう”とあるのだが、外したルーフをトランク内にカチッと収めたことは筆者も実車で経験した記憶にあるものの、工具に関しては脱着にはラチェットのようなものを使ったかも……と、少々うろ覚え。ただし、多少スカットルシェイクを感じつつも、豪快かつ爽快な試乗ができたことはハッキリと覚えている。
大ヒットした初代RVRにもオープントップモデルが存在!
ここでいきなりクルマのカテゴリーが飛ぶのだが、ルーフ部分が完全なオープンとなるクルマとしては、ほかにも三菱RVRオープンギヤやスバル・ヴィヴィオTトップがあった。RVR(初代)は1991年2月に登場し、ミニバンのシャリオのショートホイールベース版に位置づけられ、片側スライドドアを持つ背の高いワゴン型のクルマとして人気を集めた。そのバリエーションのひとつとして1993年8月に加わったのがRVRオープンギヤで、ワゴン(ミニバン)タイプでありながらフロント席頭上のルーフがスパッとカットされ、電動オープンルーフとしたもの。
写真でもお分かりのとおり、本来のスライドドアは持たず、前席左右ともヒンジドアのレイアウトとなるも、そんな犠牲を払ってでも採用された電動ルーフは、80km/h以下であれば走行中の開閉操作も可能となっていた。いろいろな意味で自由奔放というか、今では考えられないようなユニークな“装置”を備えたクルマだった。
軽自動車のヴィヴィオは4つのオープンエアスタイルが楽しめた!
今では考えられないという点ではスバル・ヴィヴィオTトップもそうだ。1993年5月、富士重工40周年記念車として3000台限定で発売されたモデルだったが、標準のヴィヴィオをベースに、マルチトップと呼ぶ3分割ルーフのクーペ(定員は4名を確保)に仕立てた何とも贅沢なクルマであった。頭上のルーフの脱着は“手動”だったが、ルーフはわざわざ3分割になっており、中央を残してTバールーフ状にすることもできた。
一方でリヤオープンと呼ぶモードは、電動でリヤウインドウを格納したり起こしたりできるというもの。つまりルーフはすべて取り外した状態で、リヤウインドウを格納した状態がフルオープン、リヤウインドウを起こせばオープントップと呼ぶタルガトップ状態と、あの最初のポルシェ911タルガと同じスタイルが日本の軽自動車のヴィヴィオで楽しめた……というクルマだった訳だ。
記憶が正しければ、筆者の“初タルガトップ体験”はそれほど昔ではなく、確か80年代中ごろに試乗の仕事で乗ったフィアットX1/9が最初だった。フルオープンの自ずと後頭部までフルに(笑)さらされる感覚とはひと味違う“半分守られている感”が、それはそれで味わいがあると思ったもの。フルオープンよりも身近な、オープン感覚が味わえるところがこのタイプのクルマのポイントだ。