ドリフト大会で華々しくデビュー!
日本でも大きな話題となった、アメリカでのトヨタ「GRカローラ」の発表。TOYOTA GAZOO Racingが、カリフォルニア州ロングビーチで開催のドリフト競技シリーズ「フォーミュラドリフト」開幕に合わせて2022年3月31日に「GRカローラ」をワールドプレミアしたのだ。
それにしても、なぜアメリカで発表なのか? それに、なぜ日本のように「ヤリス」ベースではないGR導入なのか?
アメリカ市場でヤリスは販売が休止されてしまった
答えはとてもシンプルだ。アメリカでは2020モデルイヤー(2019年夏~2020年春発売モデル)をもって、4ドアヤリスとヤリスハッチバックの販売が休止されたからだ。
アメリカ市場では2000年代以降、トヨタなど日系メーカー各社が、グローバルでいうところのBセグメント(日本ではコンパクトクラス)に相次いで参入した。アメリカの主要市場である、C/Dセグメントからのダウンサイジングを狙ったのだ。C/Dセグメントには、「カローラ」、「カムリ」、「シビック」、「アコード」などが属する。
しかし、2010年代になると市場トレンドはC/Dセグメントから、「RAV4」や「CR-V」などコンパクトSUVへのシフトが顕著になっていく。
そうしたなかで、トヨタはC/Dセグメントセダン市場での地盤固めを検討。「カローラ」、「カムリ」について、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の採用に併せて、走りの良さと若い世代にも強くアピールできるスポーティなデザインテイストを盛り込んだ。
とはいえ、2010年代後半から2020年代へと向かうなか、欧州を基点としたBEVシフトなど環境対応に向けた電動化のトレンドがアメリカにも押し寄せてきた。
こうしたアメリカ市場の主流とは別に、スポーツ性を重視したブランド戦略という切り口で、デトロイト3(GM、フォード、ステランティス)、日系メーカー、欧州メーカーがあらためて新作をアメリカに送り込むようになる。
販売台数は限定的でも、また実際に購入する若者の数があまり増えなくても、自動車産業の大きな変化の時期に、自動車メーカーとして「攻めの姿勢」を見せることも、ブランド全体の資産になるという考え方である。
カスタマイズブームがまた盛り上がっている
アメリカでは90年末から2000年代初頭に、メーカーのカタログモデルにおける、メーカー系チューンやカスタマイズが一時的なブームになっていた時期がある。
そうした、いま(2022年)から20年ほどまでの市場へのインパクトが、いま20~30代の層には幼少期の記憶として、また、いま40~60代の層には当時の様子をリアルタイムで知っている身として、ふたたび訪れたメーカー直系のハイパフォーマンスカーブームを楽しんでいる。
こうした市場背景のもと、トヨタはアメリカのGRを、GR86とスープラに加えて今回、主要Cセグメントでのカローラ派生車として投入したといえる。日本では、GRカローラは2022年後半に発売予定だ。