旧車を通じて「地域おこし」に取り組む埼玉県・皆野町
若者のクルマ離れ……そうした言葉を耳にするようになって久しいが、実際に旧車イベントなどに行ってみると、初めてのクルマがヒストリックカーだという若者たちも少なくない。昔とはライフスタイルも変わって、クルマが生活必需品ではなくなった現代ではあるが、さまざまな趣味と同様、ヒストリックカーを完全な趣味として楽しむ若者たちも決して少なくはないようだ。
その一方、DIYで愛車のメンテナンスをする文化は、新しい世代にうまく引き継がれているとは言えない。さらに旧車のスペシャルショップも高齢化が進んでいて、10年後、20年後に旧車に乗り続けるためのノウハウの継承が課題となっているのだ。
若い旧車乗りのための「皆野サンデーメカニック」開催
埼玉県北部の秩父郡皆野町では、これまでも「地域おこし活動」として、展示イベント「皆野サンデーミーティング」、コマ図と呼ばれるルートマップを使った「皆野サンデーラリー」という、ヒストリックカーをテーマにしたイベントを行ってきている。
「皆野サンデー」参加者のなかには、初めてのマイカーがヒストリックカーだという20代の若者たちもおり、「自分のクルマのメカニズムを知りたい」、「定期的なメンテナンスは自分の手でやってみたい!」といった声もあった。
そこで今回、若者向けのメカニック教室「皆野サンデーメカニック」が企画された。地域の活性化は嬉しいと、過去のイベントもスタッフとして参加している地元のタイヤショップ「太進タイヤ」太田代表から、「お店の定休日の日曜日は自由に使ってください」とのお声がけをいただいた。地元の民間企業の協力も「地域おこし」の大切な要素といえるだろう。
イギリス車3台とドイツ車1台の若者オーナーが参加
会場も決定し、参加者を募ったところ、ヒストリックカーを楽しむ若者4名が集まった。4年前から所有していてメンバー中一番長くヒストリックカーに触れている江川さんは1964年型「MG-B」。日本国内に販売車両がなかったため、イギリスから個人輸入してしまったという佐々木さんは1967年型「MG-B GT」。佐々木さんと大学時代の同級生である中野さんは友人からの悪影響か(?)、「アウディA2」に加え1970年型「ポルシェ914」を手に入れたばかり。1979年型「トライアンフ・スピットファイア」の中村さんは、予備のエンジンの購入に軽トラをレンタルし、横浜の自宅から愛知県まで引き取りにいくほど情熱的だ。
講師は、群馬県桐生市にあるメンテナンスガレージ「ハイドアウト」代表の金子秀昭氏。ディーラーやチューニングショップでの勤務時代から、自身の愛車は「ミニクーパーS」や「オースチン・ヒーレー」で、英国車を中心にドイツ車やV6エンジンも得意とするメカニック氏だ。
現役メカニック講師が工具やオイルの基本からレクチャー
こうして始まった、「皆野サンデーメカニック」当日のメンテナンス講座は座学からスタート。明るい性格の金子講師が講習生の緊張を解きほぐす。講習生たちにはそれぞれ、英国車乗り用としてインチサイズの工具、ドイツ車乗り用としてミリサイズの工具が用意された。内訳はコンビネーションレンチセット、ソケットレンチセット、そしてシックネスゲージ。配られた工具を手にする姿は、まるでクリスマスプレゼントをもらったかのようで微笑ましい。
エンジンオイルはミネラルベースの「リキモリClassic Motoroil SAE 20W-50 HD」を使用。金子講師からはオイルの性質の説明や、昔のエンジンでも浸透性の高いオイル用に対策したオイルシールがあることなど、アップデートパーツの解説もあった。また、エンジンの点火の説明としてデストリビューターを手に、ヒストリックカーならではの点火システムでのポイント調整も説明された。