日本人は都市型SUVじゃなくて「クロカン4駆」を望んでいる事を「ラングラー」が証明!
2021年はジープの国賠販売台数が1万4294台を記録し、過去最高の売り上げを叩き出した。これで2013年以来、9年連続して販売記録を更新し続けていることとなり、日本人がジープを求めていることが理解できる。そのなかでも「ラングラー」は絶好調で、前年対比で20.4%アップを記録し、Dセグメントの「ボルボXC60」、「メルセデス・ベンツGLC」、「BMW X3」よりも売れているという。このデータを見てもジープ・ラングラーが日本人の琴線を刺激しているのかが分かるはずだ。
ちなみにジープ・ブランドとしてはラングラーのほか、B/Cセグメントの「レネゲード」、「コンパス」なども好調で、ジープのエントリーモデルとして高い人気を博している。
無骨な本格クロカンの本家として唯一無二の存在感
2022年のジープラインアップを整理しておくと、「レネゲード」(338万円~)、「コンパス」(369万円~)、ジープ人気の主役である「ラングラー」(704万円~)、ハイエンドモデルの「グランドチェロキーL」(788万円~)、まもなく販売が開始されるトラックスタイルの「グラディエーター」(810万円~)の5モデルとなり、レネゲードにはプラグインハイブリッド(550万円~)も用意されている。残念なことに一時期のジープ人気を支えた草分け的存在の「チェロキー」は生産・販売が中止され、今後は新型車としてデビューが待たれる「リバティ」へと引き継がれるという噂が濃厚だ。
そもそも、日本人のなかで育まれたジープのイメージは「軍用車」であり、戦後の日本では米軍兵士の乗り物として認知された。その後、テレビドラマ『コンバット』でサンダース軍曹が乗るクルマとして重要な役割を果たし、「丸目2灯ヘッドライトと7本スロットグリル=ジープ」という記憶が焼き付いたのである。ジープが持つ武骨なイメージは強烈で、納車待ちが続く「スズキ・ジムニー」や「トヨタ・ランドクルーザー・プラド」にも影響を与えていることが分かるはずだ。
最近は都市型SUVやアーバンSUVと呼ばれるモデルが数多く発売されているが、本来SUVとは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略で、日本語に訳すなら「スポーツ用多目的車」。本来なら荒野や戦場を駆け巡るジープはSUVには含まれず、昔ながらの「クロスカントリー(クロカン4WD)」として区別するべきなのだと思う。
要するにSUVとクロカン4駆は似て非なるクルマであり、同一線上に並べるのはナンセンス。SUVが大きなブームを巻き起こしているなかで、唯一無二の存在感を放つラングラーは、昔ながらの丸目2灯に背面タイヤというレトロなスタイルを押し通し、その武骨さには「ジープ=非日常のクルマ」が具現化されている。
デザイン戦争に流されない普遍的なスタイル
高級車メーカーやスポーツカーブランドまでもが参入し始めたSUVの世界では、その存在感は「ドングリの背比べ」になってしまい、ロールス・ロイス、ベントレー、ランボルギーニ、マセラティ、ポルシェ、BMW、アウディと「ブルータスお前もか!」のごとく、どれも同じように見えてしまうのは残念だ。唯一ジープ・ラングラーのライバルになりえるのはメルセデス・ベンツの「Gクラス」であり、Gクラス(ゲレンデヴァーゲン)も軍事車両として寵愛された経緯を持つ。
丸型ヘッドライトと背面タイヤを背負ったクロカン4WDは1979年の誕生から姿を変えることなく人気を誇り続けている。また、前記した納車待ちが続くスズキ・ジムニーも同様のスタイルが与えられ、軽自動車/コンパクトカーというセグメントながらもクロカン4WDとして歴史を積み重ねているのだ。
ここからは個人的な見解だが、ジープを乗り継ぎ、現在も「KJ型」のチェロキーに20年近くも乗っているボクからすると、ジープを求める人の多くはデザイン戦争に辟易し、形が変わらず長く乗り続けられるオールドスクールの定番モデルを望んでいるということだ。
リーバイスの「501」、コンバースの「オールスター」、ショットの「ワンスター」、ロレックスの「サブマリーナ」、ABUの「5000番」のように、長い人生を共にしても時代や流行に流されない普遍的な魅力がジープ・ラングラーには存在する。何年乗っても「型落ち」や「時代遅れ」にならない安心感は、ほかのクルマでは味わうことができない大きなセールスポイントなのだ。