軽量化とパワーアップ! 美しいクルマは速くて美しいレーシングカーに
3.0CSLという車名ですが、3.0は当然エンジン排気量3.0Lを示しています。2500や2800でも使用されていたCとSは、それぞれクーペ(Coupé)とシュポルト(Sport)を意味していますが、最後のLはLeicht(ライヒ。独語で軽量の意)を示していました。そう、高性能を生み出すための公式ともなっている軽量を意味するネーミングだったのです。
具体的にはボンネットやドア、トランクリッドをオリジナルのスチール製からアルミ製にのパーツに交換し、フロント&リアのウインドウを薄厚のラミネートガラスに交換。そしてルーフなどボディの一部も薄い鉄板でプレス成形し、防音材やカーペットも取り去られていました。
さらにはボンネットを固定するボンネットキャッチャーが取り外されて、ボンネットピンに置き換えられるほどの徹底ぶりでした。その結果1400kgもあった車両重量は200kgもシェイプアップが進み、このクラスとしては驚くべき軽量なクルマに仕上がっています。また、スチール製だったフロントバンパーをチンスポイラーを兼ねたバンパーカウルに交換し(軽量化でも効果あり)、ボンネットには整流を目的としたフィンを立て、リヤのトランク上には大袈裟なウイングを装着(これはレースオプションでしたが……)するなど、空力に配慮されていたのも大きな特徴でした。
もちろんエンジンも強力で排気量も3Lを超えるエボリューションモデルを投入。オリジナルの2985ccではクラス上限(3000cc)を超えての排気量拡大はレギュレーション違反となりますが、最終モデルの3153cc(89.3mmφ×84.0mm)なら3500ccまで排気量を拡大できる(ただしクランクの変更はNGなのでストロークは延長できない)のです。結果的に最終的な市販モデルで206HPとされていましたが、そのパフォーマンスは73年のヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)で見事開花。チャンピオンに輝きました。
今回の“もう一方の”主役は2016年に製作された3.0CSL Hommageです。これはその名の通り、1970年代のBMW 3.0CSLをオマージュして製作されたコンセプトモデル。オリジナルではスチール製のパーツをアルミ製に交換していましたが、こちらはカーボンを素材としたパーツに置き換えることで軽量化を追求。
またカーボン製のロールケージや、直6エンジンにハイブリッドシステム「e Boost」を組み合わせたパワートレーンにも興味深いものがありました。さらにAR(Augmented Reality=拡張現実)ディスプレイ・ヘルメットバイザーなど年寄ライターにとっては現実からかけ離れた装備も紹介されていましたが、何よりも今回、特筆したいのはそのルックスで、誰言うともなく「まるでカーズに登場するキャラクターみたい!」と盛り上がったようです。
確かにこれは言い得て妙。キャラクターチックなデザインではありますね。ただし、当時の技術解析で、との条件は付くのですが、オリジナルが空力に配慮したデザインだったのに対して3.0CSL Hommageのデザインは、まずはデザインありき、のように思えてなりません。
フロントのオーバーフェンダーがボンネット上まで回り込むデザインも、ボンネット上に無用な凸凹を生じさせているのはその好例と言っていいでしょう。そう言えば正面から見ると、アメリカのカートゥーン・ドッグ、ドルーピー、いや……獰猛な犬に見えなくもないような……。