フェラーリFXX(2005年)
XXプログラムのサーキット走行専用車として一番最初に登場したのは、2002年に発表された「エンツォフェラーリ」にインスパイアされた「FXX」だ。エンツォフェラーリはF1における経験が存分に活かされたモデルで、その開発時には「FX」の開発コードが与えられていた。FXXという車名は、これに由来している。
FXXには、最高出力800ps以上を発生する排気量6262ccのV型12気筒エンジンが搭載されていた。また、入念に造り込まれたエアロパッケージにより、FXXのダウンフォースはエンツォフェラーリのレベルを40%も上まわるものだった。
ひとりひとりのクライアント・テストドライバー(=超富裕層のオーナー)に合わせ、コックピットがカスタマイズされていた点も特徴のひとつで、FXXのデリバリー台数は計29台であった。
2006年に左右のドアに「30」と記されたオールブラックのFXXが30台目として生産されたが、これはF1のトルコGPから戻ったスクーデリア・フェラーリ・チームのミハエル・シューマッハに贈呈されたクルマ。同年の9月初旬にシューマッハも、ニュルブルクリンクに集まったクライアント・テストドライバーのチームに加わったそうだ。
「Evo」キットの開発においてもシューマッハの提案が採用されることになり、XXプログラムは2008年と2009年のシーズンまで延長された。FXXは、XXプログラムで誕生した初代モデルとして、コルセ・クリエンティが企画するイベントに姿を見せ、その後も世界有数のサーキットで雄姿を披露した。
フェラーリ599XX(2009年)
FXXの次にラインアップされたXXプログラムのサーキット走行専用車は「599XX」だ。「599GTBフィオラノ」をベースとして、2009年のジュネーブ・ショーで発表された。599XXプログラムがスタートしたのは2010年からである。
2011年のボローニャ・モーターショーで進化版の「599XX Evo」が一般公開され、翌年、鈴鹿サーキットで開催された「フェラーリ・レーシング・デイズ 鈴鹿2012」において世界初の公開走行が行われた。599XX Evoは空力や排気系などを中心にモディファイされ、電動可変式リヤウイングなどのエアロデバイスが装着されていた(この金額が推定3500~4000万円である!)。
搭載されたエンジンは599GTBフィオラノ用をベースとした排気量5999ccのV型12気筒で、オリジナルが620psであったのに対し、700psへとパワーアップ。車体はベース車両の1750kgから1350kgへと大幅に軽量化されていた。
フェラーリFXX K(2014年)
最後に登場したのは、「ラ・フェラーリ」をベースに製作された「FXX K」と、空力をアップデートした「FXX K Evo」だ。FXX Kが発表されたのは2014年、FXX K Evoは2017年に登場し、パッケージオプション&一部モデルは完成車としてデリバリーされた。車名の「K」は「KERS」システム(ブレーキング時に発生する熱エネルギーを回収し、加速時のホイール駆動に再利用する装置のこと)に由来し、排気量6262ccのV型12気筒エンジンとモーターアシストを合わせた総出力はラ・フェラーリを100psほど上まわる1050psだった。
「F40」や「F50」といったスペチアーレ・フェラーリを何台も所有している超富裕層の日本人オーナーは、フェラーリに招待されたら飛行機をチャーターし、スペインまで走りに行って、フェルナンド・アロンソにレッスンしてもらっていたが、エクスクルーシブなXXプログラムとはそういうものなのであった。