エンジンを回しても気持ちいいハイブリッド車
さて、アライアンスによって採用された日産の「プロパイロット1.0」相当+の充実した先進運転支援機能を標準装備するアルカナを走らせれば、もちろん、出足はモーター走行(グリーンのEVアイコン)。静かに、滑らかに走り出す。すでに報告したように、出足約40km/h以下ではエンジンはまずかからない。ただ動力源が静かなだけに、ハイブリッドシステム周りのノイズが気にならないでもないが、音楽でも聴いていればどうということはない。
速度を増していけば、メーター内のエンジンのアイコンが白く点灯し、エンジンがかかっていることが分かる。だが、モーター走行からエンジンが始動してもじつにシームレスで、エンジンがかかったことなどまず気づかせない制御の良さがある。しかも、山道や高速走行でエンジンを高回転まで回せば、「ノイズ」とは異なる抑え気味の快音を響かせ、グイグイ加速するのだから気持ちいい。フルハイブリッド車で、こうした走りの気持ち良さを味わわせてくれる日本車はそうはない。
R.S.自慢のスポーツシートがじんわり快適
操縦性もさすが、ルノーだ。太めのレザーステアリングは適度な重さでじつにスムース。まさに意のままにクルマを動かせる。韓国製のクムホ、215/55R18サイズのタイヤを履く乗り心地は最低地上高200mmに気遣ってか、やや硬め。だが、よほどの悪路や凸凹道でない限り、角が丸められた、クラスを超えたフラットで上質な乗り味を示す。山道を走り、ステアリングを右へ左へと切り返すシーンでも「運転が楽しい」と思わせてくれる、正確で気持ち良さある操縦性を示すのだからゴキゲンだ。
そうした場面で感動したのが、前席のかけ心地。フランス車のシートの良さはあらためて説明することもないが、このR.S. LINE専用のスポーツシートは背中のじんわり快適なホールド感が絶妙だ。例えば箱根の乙女峠旧道のようにタイトなコーナーが続く道でも背中が左右に振られず、安定感ある視線、姿勢のまま爽快に走れたほどだった。なお、スイッチまたはタッチスクリーンで選べるドライブモードは、「Sport」、「Eco」、個別設定が可能な「My Sense」の3種類。モードごとのメリハリもあって、使えるドライブモードと言っていい。
ACCが優秀でロングドライブもラク
一方、高速走行も文句なしだ。動力性能、直進性の良さ、安定感、巡行時の静かさ(ロードノイズはやや気になる)、そしてACCの作動に満足できた。ACCの作動はプロパイロット1.0相当とは言っても日産の国内仕様のものとはさすがに異なり、欧州仕様にリセッティングされている。具体的には約60km/h以上でONにでき、作動上限速度160km/h(!)、渋滞時は0km/h~のSTOP&GOが可能。約3秒間はACC保持~自動再発進……という仕様になる(電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能、ブラインドスポットモニター完備)。
そんなルノー・アルカナはそのスタイリッシュさから都会に似合い、またFFながら最低地上高の余裕と車中泊にも対応するパッケージング、ロングドライブも快適な乗り心地や静粛性、そして燃費の良さ、荷物の積載力の高さもあって、アウトドアシーンでも大活躍してくれること間違いなし。人とは違う輸入クーペSUVを探しているなら、ぜひ候補に挙げたい1台である。発売は5月26日となっている。
ルノー・アルカナのスペック
■ルノー・アルカナ R.S. LINE E-TECH HYBRID主要諸元
〇全長×全幅×全高:4570mm×1820mm×1580mm
〇ホイールベース:2720mm
〇車両重量:1470kg
〇乗車定員:5名
〇最小回転半径:5.5m
〇エンジン種類:直列4気筒DOHC
〇総排気量:1597cc
〇最高出力:69kW(94ps)/5600rpm
〇最大トルク:148N・m(15.1kg-m)/3600mm
〇メインモーター最高出力:36kW(49ps)/1677-6000rpm
〇メインモーター最大トルク:205N・m(20.9kg-m)/200-1677rpm
〇サブモーター最高出力:15kW(20ps)/2865-10000rpm
〇サブモーター最大トルク:50N・m(5.1kg-m)/200-2865rpm
〇燃料タンク容量:50L
〇トランスミッション:電子制御ドグクラッチマルチモードAT
〇燃料消費率(WLTCモード):22.8km/L
〇サスペンション 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
〇タイヤ 前・後:215/55R18
〇車両本体価格(税込):429万円