レース以外でも多くの協業による取り組みが実を結んだ
鈴鹿サーキットでのスーパーフォーミュラ第3戦から一夜明けた4月25日。トムスとデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社は『デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社と株式会社トムスの包括的協業における、開始から1年の成果発表』と題した合同会見を実施。昨年3月に締結した『モビリティサービス領域での包括的な協業』について、1年間にわたる進捗具合と今後の予定を発表した。
ドライバーふたりの成長は人材育成における大きな成果に
国内外のトップカテゴリーで活躍してきたトムスと、国内最大級のビジネスプロフェッショナルグループであるデロイト トーマツ グループにおいて、ファイナンシャルアドバイザリーサービスを担うデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー共同会社(DTFA)は昨年3月、モビリティ領域における包括的な協業に関する契約を締結していました。具体的な協業のメニューに関しては、
1:グローバル人材の育成
2:レースデータ分析(アナリティクス)
3:オートパーツメーカーへの事業承継支援戦略
4:EV技術などの開発、EVレース場の運営
5:E-Sportsの展開とDigital Twinsの実現
6:スーパーシティ・スマートシティとの連携
7:オートメーカー全般を含むESG戦略の策定
という7点。契約の締結から約1年がたち、その進捗状況が明らかにされました。
このなかでもっとも目に見えたものは1:グローバル人材の育成で、具体的には昨シーズン、全日本スーパーフォーミュラライツ選手権(SFL)とSUPER GT(SGT)のGT300クラスにフル参戦したジュリアーノ・アレジ選手の活躍です。
2シリーズにフル参戦するハードスケジュールのなかで、SFLではシーズン後半に4勝を挙げる成長を見せると同時に全17戦(1戦はキャンセル)中14戦で表彰台に上るなど安定した力を見せつけていました。
また中嶋一貴選手の代役としてスポット参戦した全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)でも、「運にも恵まれた(トムス舘 信秀会長)」面もありましたが自身の2レース目で初優勝を飾るなど見事な活躍を見せ、今シーズンはSGTのGT500クラスとSF、国内ふたつのトップカテゴリーにステップアップを果たしています。
この項目に関して2022年は、引き続きアレジ選手のさらなる成長を促すとともに、昨年のフォーミュラ・リージョナル(FRJ)のチャンピオンを獲得した古谷悠河選手をアレジ選手の後釜としてSFLに参戦、その成長を促すことになっています。
2:レースデータ分析(アナリティクス)に関してはレーススペシャリストのトムスが、レースなどの走行セッションを通じて蓄積したデータを、データ分析のスペシャリストであるDTFAが分析。戦略として、例えば予選のアタックやレースにおけるタイヤ交換などのタイミングの判断で、好結果に結びつくことが何度もあったようです。また3:オートパーツメーカーへの事業承継支援戦略では、ヘルメットメーカーのケースが紹介されていました。
広島に整備される“モビリティ・エンターテイメントの聖地”に期待
4:EV技術などの開発、EVレース場の運営と、5:E-Sportsの展開とDigital Twinsの実現に関しては、競技用やレンタル用のカートを開発する一方で、アジア圏随一の“モビリティ・エンターテイメントの聖地”を謳う『ひろしまモビリティゲート(名称仮)』が広島県の再開発事業において採択されたことが報告されました。
こちらではトムス・フォーミュラ・カレッジやサイクリング、野外イベントなどが実施できる多目的サーキット広場のほか、室内EVカート場やレーシングシミュレーターが体験できる施設が集まったものになるとのこと。例えば、仲間と一緒にカートを楽しむために出かけて、待ち時間の間にシミュレーターを使ってバーチャルのレースを楽しむ、といったアイディアも披露されていました。
さらに6:スーパーシティ・スマートシティとの連携では、21年に内閣府と群馬県前橋市が推進する『交通テック×脳テック』において、ドライブシミュレーターを提供。住友ベークライト社が開発したの高性能脳波測定器を利用し、運転中の脳波の研究を実施しています。今後も参画を継続し、シミュレーターシステム、解析装置などを高精度化させながら、運転中の脳波研究を継続することで交通事故削減へと繋げていくという方針が示されていました。
7:オートメーカー全般を含むESG戦略の策定に関しては、日本レースプロモーション(JRP)がプロモートするSFで推進している『NEXT50』において、デロイト トーマツがトップパートナーに就任し、今後もカーボンニュートラルに向けたさまざまな取組やモータースポーツ全体の変革支援の実施を予定していると発表されていました。
これまでの具体的な成果は明らかにされていませんが、トムスの谷本 勲社長は「目指すべきものが大規模なので、この1~2年の成果としてではなく、中長期の視点で見ていますが、大きな取り組みに着手し一歩一歩進めているということだけは間違いありません」と力強くコメントしていました。