クラシックカーを維持しやすい環境のイタリア
イタリアでは、かつて世間ではクラシックカーとなりつつある中古車両が税金を逃れるべく国外に大量に流出した背景がある。そこで2009年に、製造から少なくとも20年が経過した車両が、イタリアクラシックカー協会などの管理する名簿に登録されている場合クラシックカーと認定され、車両を登録する際に課される自動車登録税が減税されるほか、30年以上経過すると自動車税も免税となる。さらにトリノやフィレンツェなど、大都市で行われている車両の交通規制からも除外されている。
またクラシックカーを対象とした自動車保険も発売されており、走行距離や地域によって異なるものの、おおむね通常の保険料と比べて大幅に安い設定となっており、所有者の負担を軽減している。
州によって異なるが税制優遇措置もあるアメリカ
アメリカでは輸入車に関して連邦政府によって「連邦自動車安全基準(FMVSS)」と呼ばれる厳しい安全基準が制定されているが、製造から25年が経過した車両は免除される。これが有名な「25年ルール」と呼ばれる施策だ。同じく製造から21年が経過した車両に関しては連邦大気汚染の基準も免除される。
クラシックカーに対する保護措置は州によって異なるが、デトロイトのあるミシガン州を例に見てみると、製造から26年が経過し、かつコレクターズアイテムとして所有されている車両で、8月を除いて通常の移動手段として使用しない(自動車ショーやパレード、自動車クラブの活動は除外)場合、クラシックカーとして認定され、希望者にはヒストリカルプレートが交付される。このプレートを交付された車両は登録料などの減免措置を受けることができる。
このままでは日本から貴重なクルマが消えてしまう
このようにヨーロッパ各国やアメリカでは自動車税の減税を中心とした保護措置が設定されており、ほかにもスウェーデンやオランダ、スイスなど多くの国で旧車に対する税制優遇措置が行われている。多くの国ではクラシックカー、とくに自国のクラシックカーは「ヘリテージ」として保護する指針となっており、これが世界のスタンダートとなりつつある。
ところが日本では旧車に重税を課し、新車に買い替えさせようとする施策が相変わらず続いているのはご存知の通り。旧車の価格が高騰している今、所有維持に対する保護措置を取らないと、近い将来、国外流出によって貴重な車両が日本から消えてしまうことにもなりかねない。そうなってからでは、いくら税金をつぎ込んでも遅いのだ。