革シートは高級車の証だった
革シートはもともと、堅牢さや耐久性の高さをメリットとして使われていたもの。馬車時代の御者が座るシートが革で、乗員が乗るキャビンのシートには、モケットなどの高級で感触のいいファブリックが用いられていた。それが近年では転じて、高級車のシンボルのようになった。輸入車の上級モデルに標準装備だったり、あるいはエキストラ・コストを支払ってのオプション設定だったりしたところから、革シート=上級、高級のイメージが定着したのかもしれない。
日本車でいち早く本革シートを採用したクルマは……本稿の締め切りまでに調べがつかなかったので、宿題とさせていただきたいが、本革シート自体は概ね1990年代に入ってから輸入車に採用され多くの人に乗られるようになった。とくに上級クラスのモデルで本革シートを標準装備とするクルマが増えたことにつられて、日本にも本革シートを最初から装備するクルマが見られるようになったのだと思う。
こだわりの本革シートを採用した日本車
日本車でこだわりの本革シートを採用した例には、1990年のユーノス・コスモ、1991年のマツダ・センティアのオーストリア・シュミットフェルドバッハ社製(カタログには最高級牛革と謳われていた)などがあった。
さらに海外の有名どころの本革シートを採用した例も。採用を初めて聞いたときには「えっ、本当に!?」と思わされたのだが、1990年の日産プレジデントのコノリー(ソブリンにメーカーオプション)、同じく1992年の日産レパードJフェリーのポルトローナ・フラウなどがその代表だ。
コノリー社は英国王室御用達(ロイヤルワラント)でもある、1878年創立のイギリスの名門皮革メーカー。
プレジデントのカタログによれば、同車に使用されたのは“X4”と呼ばれる革で、これはスカンジナビア産の限られた原皮を特別に誂え、同じ模様は世界に2枚と存在しないというものだった。
そしてこのコノリー社製レザーを採用した車種には、イギリスのロールス・ロイス、ジャガー/デイムラー、レンジローバーなどがある。
いずれもイギリスを代表する高級車ばかりだが、その名を聞けばイメージできるとおりの、落ち着いた世界観を演出していたというべきか。
プレジデントはそれまで25年続いた1、2世代から、インフィニティQ45と共通の近代的なクルマにフルモデルチェンジしたところで、シートのメイン部分にギャザーを入れるなどしながら、新しい室内空間に相応のデザインに仕上げられたシートだった。