新型の登場も噂される「キング・オブ・ミニバン」
今ではトヨタ・アルファードやヴェルファイアに人気や販売台数で圧倒されてしまった、日産のフラッグシップミニバンである「エルグランド」。しかし、振り返れば、国産高級ミニバンの草分け的存在がエルグランドであり、現在の立ち位置を払拭すべく、ついに2023年にはフルモデルチェンジされるという噂もある。ここでは、そんな日産いわく、「キング・オブ・ミニバン」のエルグランドの歴史を振り返ってみたい。
唯一無二の「高級ミニバン」を開拓した「初代エルグランド」
初代エルグランドの登場は1997年。それまでのワンボックス、「キャラバン」と「ホーミー」のミニバン版として発売されたのが始まりだ。駆動方式はキャラバン、ホーミー同様のFRで、エンジンは3.5L V6、3.3L V6、3.2L直4のガソリン、そして3L直4ディーゼルなどが揃っていた。スライドドアは左側のみ。ジャンボタクシーとしても使われ、当時は主だったライバルは不在で、多人数乗用車、高級ミニバンとして人気を博していた。翌1998年には今では日産車でおなじみの「ハイウェイスター」を追加。また、オーテックが手掛けた4人乗りの「ロイヤルライン」が、当時の日産の社長車として使われていた。
豪華で快適な室内空間を進化させた「2代目エルグランド」
エルグランドの2代目は2002年に登場(トヨタ・アルファードの初代も同年デビュー)。エルグランド専用のFRプラットフォームを採用するとともに、エクステリアデザインは一気に洗練され、リヤサスペンション、リヤブレーキも独立懸架、ディスクブレーキに進化。リヤスライドドアは両側に付くことになった。エンジンは初代同様の3.5L V6のほか、ベースパワーユニットは2.5L V6となり、コラムシフトからインパネシフトとなった5速ATと組み合わされる。
室内空間の広さは言うまでもないが、しかしFRプラットフォームゆえ、フロアは高かった。20年前のデータでも瞬時に出てくる(!?)当時の筆者の計測メモによれば、前席は1段目のステップ地上高365mm、フロアはそこから165mm高い530mm。スライドドア部分はステップ地上高380mm、フロアはそこから155mm高い535mmだった(高すぎだろ)。2列目席キャプテンシートの居住空間は、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で、頭上に195mm、膝周りに最大470mmと、当時としては広大。
フロアはフラットだが、シートスライドのレールの凸凹が気になった。3列目席は頭上に160mm、膝周りに180~425mm(2列目席シートスライド位置による)。つまり、2/3列目席ともに、よじ登り感ある乗降性はともかく、大人が快適に座れる空間が確保されていたことになる。なお、当時の10-15モード燃費は3.5Lが8.2km/L、2.5Lが8.6km/Lだった(JC08、現在WLTCモードでは当然、それを大きく下まわる)。
とはいえ、トヨタ・アルファードのライバル出現によって、FRレイアウトによる室内空間、V6のみによる燃費性能といった点でアルファードに差を付けられたのも事実。しかも、FFとなるはずの次期型開発に時間がかかり、結果、2代目登場から8年におよぶロングライフモデルとなった。ここだけの話、エルグランドにはコンピュータのなかでほとんど出来上がっていた、2.5代目と言うべきモデルがあったらしいのだが、当時のゴーン社長以下、役員へのプレゼンでまさかのダメ出しをくらったのも、3代目の登場が遅れた原因のようだ。