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「ターボは高回転でスーチャーは低回転」は誤解! 勘違いだらけの「過給機チューン」をプロが解説

人気のNAマシンだとターボキットもスーパーチャージャーキットも販売されている

NA車をパワーアップするならどっちがいいのか?

 NA乗りなら一度は憧れる過給機チューン。たとえばチューニングメニューが豊富な初代「86/BRZ」には、「HKS」から「ターボキット」も「スーパーチャージャーキット」もリリースされている。ともにピークパワーはさほど変わらない。ならば、なぜわざわざ2種類出ているのだろうか?

じつは低回転から効くのはターボでスーチャーは高回転から

 ターボは排気ガスをプロペラに当ててタービンを回し、その力でエンジンに空気を押し込む過給装置。スーパーチャージャーはエンジンの回転でプロペラを回してエンジンに空気を押し込む。排気ガスでタービンを回すターボはアクセルONからタイムラグがあるのに対して、スーパーチャージャーはレスポンス良く過給するので扱いやすいと、一般的に言われている。

 レスポンスに関してはそうなのだが、「スーパーチャージャーが低回転重視で、ターボは高回転重視」と言われるのはちょっと違う。むしろ逆だ。

 スーパーチャージャーはエンジンの回転と連動してブースト圧が上がるので、低回転では高いブースト圧を掛けられない。本格的にパワーが出るのは高回転なのである。

 対するターボは排気ガスのエネルギーによって過給する。タービンが大きいと高回転にならないとタービンが回らないが、適切なサイズのタービンなら低回転の排気ガスでも十分に過給できて、エンジンに空気を押し込むことができる。なので、じつは低回転から効くのはターボなのだ。

 HKSのスーパーチャージャーキットはもっともハイスペックなバージョンで302ps/32.2kgm。ターボキットは最新の「GT4135」キットで285ps/32.5kgm。「GTIII」キットで326ps/37kg-mを発揮する。

ミニサーキットはターボ、国際コースはスーパーチャージャー

 ではどちらがオススメかというと難しいところ。ミニサーキットでのパワー感は圧倒的にターボの勝ち。高回転を多用する場面が少なく、コーナーからの立ち上がりの回数が多いので、低中回転からドカンとトルクが出るターボが向く。

 富士スピードウェイのような大きなコースにはスーパーチャージャーの方がオススメ。高回転でのパワーはノビが良いスーパーチャージャーが有利で、低中回転もあまり使用しないのでとくに相性がいい。

 普段乗りではどちらか? というと……ターボの方がパワー感は感じやすい。信号が青になるたびターボは加速が味わえるが、スーパーチャージャーだとその恩恵を受けるほどエンジンを回さない可能性があり、そこまで効果がないかもしれない。

コスト的にはスーパーチャージャーの勝ち

 HKSのターボキットは「GTIII」キットが55万円。「GT4525/4135」キットが70万4000円。対するスーパーチャージャーキットは「GT2スーパーチャージャープロ」キットで44万円。

 スーパーチャージャーキットはエキマニなどの排気系の交換が不要で、対するターボは排気ガスでタービンを回すために専用エキマニなどの排気系モディファイが必要になる。その差がダイレクトにコストに効いてくるのだ。なので、価格的にお手ごろなのは圧倒的にスーパーチャージャーキット。

クルマに優しいのもスーパーチャージャー

 スーパーチャージャーはトルクの出方が穏やかで、高回転の伸びに効く。ターボは低中回転からドカンと出るトルクが魅力だが、ドカンとトルクが出るということは、それだけミッションへの負荷は増えるということ。もちろん速くなるわけだが、ミッションに掛かる負担も大きくなる。そう考えると長く乗るならスーパーチャージャーキットかもしれない(?)。

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