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流通台数が激減している! 第二世代GT-Rを買うなら「バカ高」でも今がラストチャンスだった

第2世代GT-R

1000万円以下の個体が急速に姿を消す第2世代GT-Rの中古車市場

 R32型からR34型スカイラインまでに設定された通称:第2世代GT-Rの中古車マーケットは以前にも増して状況は悪化している。まず、タマ数がめっきり減ってしまった。4年前くらいは市場に250台前後は流通していたが、現在は150台前後だ(筆者調べ)。500万円前後のスタート価格(R32型とR33型。R34型は1000万円から)はここ1年ぐらいは変わらないものの、1000万円以下の個体が急激に姿を消している。

多くのオーナー予備軍が指名買い
欲しいクルマがベストバイだが……

 代わりに増えているのは価格応談。つまり「本気の人以外は買わなくていいですよ!」という姿勢が強まりつつある。まあ、ほとんどのクルマが車齢20年以上で、R32/R33/R34いずれの車種もいつ何どき壊れてもおかしくない時限爆弾を抱えている。「販売店もリスクがあるのだから、買う人にも冷やかしなしで覚悟を見せてください」というワケだ。

 また「R32/R33/R34のどれでもいいからGT-Rが欲しい」というのは買取店くらいで、第2世代のGT-Rを本気で次期愛車にと考えている人はほぼ指名買いだ。つまり、欲しい車種以外は興味がないので(昔はR34が高くて買えないからR32をという人が存在し、R33は指名買いの印象が強い)、真のベストバイはオーナー予備軍が欲しいクルマとなる。ただ、それでは記事がここで終わってしまうので、クルマとしてどれが一番長く乗れるかという視点でオススメ車種を検証していきたい。

 まず、第2世代GT-Rにはどのようなグレードが存在するのか? BNR32(1989年~1994年)は、性能に影響する点で大まかに区別すると前期型の標準車/NISMO、中後期型の標準車/Vスペック系の4タイプがある。前期型と中後期型(1991年8月以降)の違いはサイドインパクトビームの有無。NISMOは前期型のレース参戦ベース車で冷却効果と空力性能向上のエアロパーツを装着し、ABSが取り外されるなど軽量化が図られたモデルだ。Vスペックは後期型ベースで大型のブレンボ製ブレーキを装着しているのが、標準車との違いだ。

14年間の歴史のなかで究極のドライビング
プレジャーを求めて絶えず進化

 BCNR33(1995年~1998年)は標準車とVスペックの2タイプで、これに前中期型と後期型で差異がある。前者はメカニカルLSDだが、後者は電子制御LSDを駆動系をきめ細かくコントロールするアテーサE-TSプロとなり、タイヤ銘柄/サスペンションのセットアップがハード仕様となる。前中期型と後期型の違いはボディで、1997年2月以降の後期型にはトランク内に補強パーツが組み込まれ、剛性がアップしている。

 また、R33のプラットフォームをベースにホイールベースを短縮し、ボディ剛性を強化したBNR34(1999年~2002年)は、R33と同じく標準車とVスペック系で区別され、メカニズム面の違いも準ずる。R34ならではの相違点は空力システムの有無で、後者はフロントアンダースポイラーとリヤディフューザーを装着。さらに後期型のVスペックⅡにはエアダクト付きカーボンボンネットが追加採用され、タービンの冷却性を高めている。また、標準車とVスペック以外にMスペックと呼ばれるグレードが存在。このモデルはVスペックをベースに新開発のリップルコントロールダンパーを装着し、スタビライザー径を見直すことで、グランドツーリング性能を目指した大人のGT-Rの位置付けだった。

車歴はほぼ20年以上……いずれも
シビアコンディションなのは間違いなし

 14年間でさまざまなモデル、グレードが登場した第2世代GT-Rだが、ほぼすべての車種が車歴20年以上。大前提としてどの世代も「普通のクルマはない」。すべての車種がシビアコンディションで、前述したとおり何らかのトラブルを抱えている可能性は高い。しっかり整備され、履歴が残されるなどの素性のはっきりしているクルマは長く乗るには率先して選びたい個体だが、それでもトラブルがゼロ(壊れない)ということはありえない。「1000万円も出したのに壊れちゃうの⁉」と思う人は、観賞用以外で手を出すべきではないだろう。

 また、購入後も定期的な点検は必須で、その診断結果に合わせて早め早めに部品を交換するのが安心して乗り続けるための基本。つまり整備費用にもある程度ゆとりが必要だ。まさに愛でるクルマなのだ。それでも年式が新しいクルマほど基本的にはトラブルが少なく、古いほど不定愁訴的な難解な不具合は起こりやすい。このあたりは距離ではなく経年数だ。また、R32からR34まで基本的なメカニズムは継承しているので、新しい世代ほど熟成(トラブル対策)は進んでいる。その点でみるとR32よりはR33が、R33よりR34のほうがトラブルは少ない傾向にある。

年式が新しいモデルほどトラブルは少ないが安心できない要素もある

 一例を挙げれば、R32はエンジンルーム内の熱対策が十分でなく、ゴム関係、配線関係は傷みやすく、エアコンも鬼門で純正品は定期的に壊れることで有名だ。そのほか、ハイキャスユニットがリヤメンバー上にマウントされるなど、整備性はお世辞にも優れているとは言えない。対して第2世代GT-Rの最終モデルといえるR34はボディ補強も念入りで、各部品の取り付け方の変更や処理が異なり、錆対策が進むなど細かい部分が進化している。

 ただし、R33やR34も今後心配がないわけではない。具体的には電動スーパーハイキャスとVスペック系の電子制御LSDの電子制御部品が壊れると、簡単にいえば非常に違和感のある操縦性となり、気持ちのいい走りから気持ちの悪い走りになる。「じゃあ、直せば?」となるが、基本は修理不可で純正部品も製造中止。中古部品(かなり高額)を使うか、ハイキャスはキャンセル(パーツは豊富で車検上問題なし)、電子制御LSDは機械式LSDに交換となる。現在は壊れたという報告例は少数ではあるが、機械ものゆえにいずれ限界は訪れる。今後、電装系を中心に本来あるべき性能に戻すことは難しくなる可能性は高い。

さまざまな点を総合した上で
ベストバイに輝いたGT-Rは⁉

 メカニズム面、経年劣化という点で心配のあるR32だが、新車の生産台数=現存数でいえば抜きん出ているがゆえに(R32の約4万4000台に対して、R33が約1万6000台、R34に至っては約1万2000台)、中古部品の流通も圧倒的に多い。また、R33、R34のようなフードレッジ(ストラット周辺部)が裏から錆びる致命的な不具合もなく(雪国でもない限り、さほど心配する必要はないが)、フロア下の錆対策(アンダーコートの散布量)は他モデルよりも広範囲に施されているなど、さらなる未来を考えるとR32が優位な要素もある。

 こうした一長一短を含めて、長く乗り続けることを考えたベストバイはどのモデルか⁉ 予算無視で現行車に負けない性能とトラブルの少なさを求めるなら、Vスペックよりも電子デバイスの少ない最終モデルのR34標準車がイチ押し。これに予算が加味されるなら、基本同じ骨格を持つ後期型のR33標準車となる。

 そして性能を求めずに長く付き合うならヘリテージパーツを含めてマーケットに部品が多く、市場に台数が残っているR32がいいだろう。ただし、いずれも店頭で買うのならばスタッフの誘惑に負けず、ボディコンディション(とくに下まわりやエンジンルームを含めた錆)と整備記録の履歴は念入りに確認しておきたい。いずれにしろ、長く乗るなら覚悟が必要なクルマ。「ちょっとGT-Rに乗りたい」という感覚ならよいが、イージーに楽しみたいなら現行車であるR35を選ぶほうが幸せになれるはずだ。

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