リトラクタブルライトを奢られたFFコンパクト
……と、ここでようやくリトラの話に入れば、確かこのリトラはクラス初のフルリトラクタブルヘッドライト装着車といった触れ込みだったはず。まあ、それはそうだったろう……と思うのは、FFの2ボックスカーというのは本来は合理性を追及した形式であり、その方針でいけばリトラクタブルヘッドライトは明らかに過剰な装備となる。だが、そこをおして採用に踏み切ったところに、何とかキャッチーな特徴を持たせたかったのだろうという企画・開発側の思いがにじみ出ていた。
カタログには「リトラクタブルヘッドランプが、斬新なスタイルを実現。空力特性もアップさせた。ボデーと一体化したカラードバンパーとも、鋭くマッチ。」との記述があるが、おそらくコンベンショナルな固定式ヘッドライトとは左右フロントフェンダーは共通、エンジンフードの傾斜も差がなかったはずで、そう考えると反対に、他モデルより特段ノーズを低くできた訳でもなかったが、とにかくリトラクタブルライトをつけた……そんな強い意志に裏打ちされた贅沢なクルマだった……とも思える。エンジンコンパートメントのスペースのことを考えると、図面を書く設計担当者はさぞ苦労をされたのだろう、とも思える。
オザケンでおなじみ4代目は女性誌のようなカタログ
なおターセル/コルサ/カローラIIは、リトラのあとにも2世代続いたが、リトラの次の世代(1990年9月登場/3代目)の2ボックス(3ドアハッチバック)は、派手でこそなかったが、大きな3次曲面になったリヤウインドウを採用するなどして、ヨーロピアンコンパクト的なチャーミングさをもっていた。
そしてその次の世代(1994年9月登場/4代目)は、あのオザケン(小沢健二)が「カローラIIにのって」のCMソングを歌っていたモデル。作詞作曲は本人ではなかったんだと、いま、当時の広報資料一式とともに出てきたシングルCDのジャケットのクレジットを見て初めて知った。
だが、CMはのノホホンとしたタッチだったが、カタログはフェミニンな感じの当時の女性誌風の仕立てで、大人のキャリアウーマンを意識したようだ。「カローラIIのどこが好きかと聞かれたら、こう応える。まず、スタイル。甘すぎないところ。シャープな印象」、カタログにはそんな記述もあるが、世代ごとにそれぞれの打ち出し方があったのだなぁ、と懐かしい。