ターセル、コルサ、カローラIIの三兄弟、通称「タコ2」
初代「カローラII」は、初代「ターセル/コルサ」が初のフルモデルチェンジを受けた1982年5月に、新たに3兄弟の3番目のモデルとして登場した。ターセルとコルサがバリエーションに4ドアノッチバックセダンをもっていたのに対し、カローラIIは2ボックスの3ドア&5ドアハッチバックのみの設定だった。ちなみにターセル/コルサの初代は1978年、トヨタ車初のFF車として登場。ロングホイールベースや、エンジンとミッションを2段重ねにしたユニークな設計が特徴だったとともに、「百恵の赤い靴」のCMでも一世を風靡した。
また、話が前後するがカローラII誕生でシリーズが3兄弟になった折に、非公式だが巷(業界内?)では「タコ2(ツー)」なる省略で呼ぶ言い回しが生まれた。「レビ/トレ」「セド/グロ」ならまだしも、ターセルとコルサだから最初の1文字ずつを機械的にとって「タコ」とは、いくら何でも自由すぎないか……と密かに思ったというのはどうでもいい話だが……。
2代目は原田知世さんがイメージキャラの「流星ライナー」
ところでカローラIIの初代は、テニス・プレーヤーのジョン・マッケンローをCMに起用することで話題を集め費用対効果をあげていたわけだが、1986年5月になるとフルモデルチェンジを迎え、2ボックスのターセル/コルサ/カローラIIが2代目に進化した。まだこの世代のことだったから、意外にも初代に対してこの2代目でやっと、一般的なエンジン横置きのFFになった。
なお「かッ飛び」「イダテン」でおなじみのEP71型「スターレット」は、この2代目「タコ2」よりひと足早い1984年10月の登場時にエンジン横置きのFF化が実行されており、それを追いかけてのことだった。そのためか、ホイールベースはスターレットより80mm長かったものの、カローラIIの前モデルに対しては50mm短く、前後席の間隔もカローラIIの新旧では「±0」と広報資料にあり、ボディ全長も新型のほうが短くなっていた。今にして思えば、ボディサイズ(車格)自体は「隙間狙い」だったとして、何となく縦横比(全長×全幅)が不思議だったり、大きくもなく小さいわけでもないところが、ユニークな存在ではあった。
で、ユニークさの極みだったのが、リトラだ。映画「私をスキーにつれてって」の劇中車でもあったそうで、ついでに原田知世がCMやプロモーションビデオにも登場していたらしいが、まあそういったタイアップ系の話はともかく、カローラII(とターセル/コルサ)は女性ユーザー比率の高いクルマでもあった。「ライム」「ソフィア」といった女性仕様車もあったし、少し贅沢なキャンバストップ仕様も用意されていた。なので原田知世が宣伝活動に起用されたのはごく自然なことだったのだろう。
リトラクタブルライトを奢られたFFコンパクト
……と、ここでようやくリトラの話に入れば、確かこのリトラはクラス初のフルリトラクタブルヘッドライト装着車といった触れ込みだったはず。まあ、それはそうだったろう……と思うのは、FFの2ボックスカーというのは本来は合理性を追及した形式であり、その方針でいけばリトラクタブルヘッドライトは明らかに過剰な装備となる。だが、そこをおして採用に踏み切ったところに、何とかキャッチーな特徴を持たせたかったのだろうという企画・開発側の思いがにじみ出ていた。
カタログには「リトラクタブルヘッドランプが、斬新なスタイルを実現。空力特性もアップさせた。ボデーと一体化したカラードバンパーとも、鋭くマッチ。」との記述があるが、おそらくコンベンショナルな固定式ヘッドライトとは左右フロントフェンダーは共通、エンジンフードの傾斜も差がなかったはずで、そう考えると反対に、他モデルより特段ノーズを低くできた訳でもなかったが、とにかくリトラクタブルライトをつけた……そんな強い意志に裏打ちされた贅沢なクルマだった……とも思える。エンジンコンパートメントのスペースのことを考えると、図面を書く設計担当者はさぞ苦労をされたのだろう、とも思える。
オザケンでおなじみ4代目は女性誌のようなカタログ
なおターセル/コルサ/カローラIIは、リトラのあとにも2世代続いたが、リトラの次の世代(1990年9月登場/3代目)の2ボックス(3ドアハッチバック)は、派手でこそなかったが、大きな3次曲面になったリヤウインドウを採用するなどして、ヨーロピアンコンパクト的なチャーミングさをもっていた。
そしてその次の世代(1994年9月登場/4代目)は、あのオザケン(小沢健二)が「カローラIIにのって」のCMソングを歌っていたモデル。作詞作曲は本人ではなかったんだと、いま、当時の広報資料一式とともに出てきたシングルCDのジャケットのクレジットを見て初めて知った。
だが、CMはのノホホンとしたタッチだったが、カタログはフェミニンな感じの当時の女性誌風の仕立てで、大人のキャリアウーマンを意識したようだ。「カローラIIのどこが好きかと聞かれたら、こう応える。まず、スタイル。甘すぎないところ。シャープな印象」、カタログにはそんな記述もあるが、世代ごとにそれぞれの打ち出し方があったのだなぁ、と懐かしい。