日本らしいオプション装備が満載だった
ひと口にクルマの装備といっても、その範囲は数多ある。まあ、あえて定義するならば走るために最低限必要な機能部分以外の+αの機能といえばいいか。昔、ヤナセのとある営業所で代車にメルセデス・ベンツ190Eアンファングを借りたことがあったが、知人女性を乗せたところ「へぇ、ベンツでも手で回して窓を開けるクルマがあるんだぁ!」と物珍しげに声を上げたのを思い出した。まさに“入門車”だった当時の当該190Eは、パワーウインドウは非装着だった。時代が変わって、今なら軽自動車でもほとんどのモデルはパワーウィンドウ付きだ。
日本車はもともと装備の充実度や奇想天外さ(!?)にかけては、世界でも一歩先を行っていた。アウトサイドミラー(ドアミラー)の電動折り畳み機構など、もともと日本車が始めて、そのうち欧米車も追従したもの。車両価格差が小さく納得できれば「MTよりATのほうが楽でいいじゃん」と欧州車でもATが普及したように広まったパターンだ。
ワイパーに機能がたくさんあった
他方で奇想天外部門(!)でいうと、ワイパー関連がいろいろ。世界初だった日産レパード(1980年・初代)の“ワイパー付き電動リモコンフェンダーミラー”、シーマ(1988年・初代)のドアミラーワイパーや、トヨタ・クレスタ(1988年・3代目)では何と“ウォッシャー連動サイドウインドウワイパー”が“超音波雨滴除去装置付きドアミラー”とともに設定されたが、これは確か1代限りで姿を消した。
プレリュードにあったリトラクタータイプのフォグランプとリモコンポール
外装関係ではほかに、ホンダ・プレリュード(1987年・3代目)のオプションパーツカタログに載っていた、カバーの開閉が室内から操作できたリトラクタータイプのフォグライト、かつてよく見かけた、伸縮式のリモコンポール(コーナーポール)なども。
スポーツカーなのにムートンのシートカバー
インテリア系に話を移すと、ここも話題はこと欠かない。記憶のなかでインパクトの大きさでいうと、サバンナRX−7(1985年・2代目/FC3系)に設定されていたムートンのシートカバー。
いま見ると「何故にFCに!?」と思えるが、1970年代終盤から1980年代にかけて、ディスカウントショップのカー用品コーナーで売られていたりと、巷でも流行っていたことは確か。
取り外し式のスピーカーボックスにENKAボタン
オーディオ関係にもいろいろあった。筆者的に「おぉ!」と思わされたのは三菱ギャラン・ラムダ(1976年・初代)に設定のあった、クルマから取り外しても使える2ウェイ木製スピーカーボックス(エンクロージャーともいう)。
三菱のオーディオ部門の名ブランドだったDIATONEの名が冠されたもので、当時、ホーム用の同社スピーカーDS−35Bを狙っていた筆者としても気になった。
そのほかルーチェ(1986年・5代目)などに設定のあった“サウンドセレクター付き正立カセット一体型AM/FM電子チューナー”も、時代を反映した装備だった。
カセットテープ自体が今や懐かしいが、この時代のソースとしては主流で、さらにホームオーディオでもカセットテープが回っているのが見える正立型がカセットデッキの主流だった。それがクルマに持ち込まれたことがすでに感動モノだったが、サウンドセレクターのボタンをよく見れば“ENKA”のポジションが! ことあるごとに取り上げる話題ではあるが、何度振り返っても感銘を覚えずにはいられない。
オーディオ関連ではほかにもクラウン・マジェスタ(2009年・5代目)の後席大型ヘッドレスト(サイド部可動)内蔵スピーカー、AVということになるが、ラシーン(カタログは1997年)にオプション設定された脱着式テレビ(高輝度画面)などもユニークだった。オーディオに関しては、ホーム用のハイエンドなブランドのシステムが投入された例なども多かったが、今回は書ききれないのでまた機会があればそのときに見ていくことにしたい。
レースのカーテン
それとカーテンもなかなか見逃せないアイテムの筆頭かもしれない。順当なところでいけばセンチュリー(2013年)のレースのカーテンなどはその筆頭。
カタログによれば“正倉院の染織物に見られる唐草紋様をモチーフとした格調高いデザイン”で、リヤについては運転席から電動で開閉操作が行えるもの。昔の高級車の定番だったレースのハーフシートカバーとセットで使えばパーフェクトだった、のだろう。
カーテン関連では、グッと庶民のクルマであるワンボックス系のモデルでも電動開閉式のカーテンが設定され、車中泊などで便利とユーザーの心をくすぐった。
ハイエース、タウンエース、キャラバンコーチなど、多くの車種で用意があった。