生活臭のないスタイリッシュなミニバン「エスティマ」
今ではファミリーカーの定番、代名詞となった国産ミニバン、それもワンボックスカーの派生車ではない車種の起源は、1994年に登場した初代「ホンダ・オデッセイ」だった。それを機に、日本のミニバンブームが一気に加速。国産自動車メーカーから続々と、室内空間効率に優れた乗用車ベースかつ前輪駆動のミニバンが登場することになる。時系列で言えば、1996年の初代「ホンダ・ステップワゴン」、それに対抗すべく登場した1999年の2代目「日産セレナ」、そして2001年の初代「トヨタ・ノア&ヴォクシー」、2002年の初代「トヨタ・アルファード」に続くことになる。
しかし、それらは多少の生活臭あるFFミニバンであったことは否めない。だがじつは初代オデッセイがデビューする4年も前の1990年に、エポックメイキングなミニバンがトヨタから登場していたのだ。そう、初代「トヨタ・エスティマ」である。
革新的なパッケージングの「初代エスティマ」
「天才タマゴ」と呼ばれたエスティマは、トヨタのカリフォルニアにあるデザインスタジオが提案した、タマゴの殻のようなワンモーションシルエット、エンジンを車体中央床下に置くミッドシップレイアウトで登場。それまでのワンボックス派生のミニバンらしきもの(?)とは違い、専用の4気筒エンジンを床下に置きながらもフロアはフラットだった(構造上、6気筒は積めなかった)。1~3列目席間の移動さえ可能にした、全長のほとんどが室内空間という、それまでにない革新的パッケージングも併せて提案していたのである。
ボディサイズは全長4750×全幅1800×全高1780mm。ホイールベース2860mm。生活臭なきスタイリッシュなタマゴ型スタイルが好評を得たのは当然だが、当時のファミリーカーとしては全長、全幅ともに大きく、床下にエンジンを搭載することでフロアも地上520mmと高かった。乗降性という点では後に登場する低床パッケージのホンダミニバンに敵わなかったのも事実。なぜ、当時としてそれほど大きかったのかと言えば、おもな市場が北米やオセアニアだったからだ。
そこで、「エスティマは大きすぎる!」という国内のファミリーユーザーの声に応えたのが、5ナンバーサイズに収まる、1992年に加わった「エスティマ・ルシーダ&エミーナ」の兄弟車だ。全長で60mm、全幅で110mm縮小し、日本の道にジャストサイズのエスティマが誕生したことになる。実際、販売台数は延べ約60万台と、本家エスティマを圧倒することになる。
いち早くハイブリッドを設定した「2代目エスティマ」
そんな天才タマゴ、エッグシェルデザインを引き継いだのが、ミレミアムの2000年に登場した2代目エスティマだ。ミニバン×ミッドシップレイアウトの反省から、エンジンはフロントに搭載。そのレイアウト変更のメリットは大きく、初代のウイークポイントだったフロアを低くすることができた(2列目席部分で地上480mm)だけでなく、待望のV6エンジンの搭載も可能になったのである(もちろん4気筒も用意)。
逆に、エンジンを車体前方に搭載することで、室内長はやや短くなったものの、エスティマらしいデザイン、当時のライバルを凌ぐ室内空間は継承されている。ミニバンにいち早くハイブリッド車を設定したのも、2代目エスティマだった(すでにAC100V/1500Wコンセントを用意)。