レースで鍛えられたシートは「疲れにくさ」性能がハンパない
「腰が痛いからバケットシートは無理」と思っているそこのアナタ! まったく逆である。じつはバケットシートの方が、腰が痛くならないのである。ル・マン24時間レースもニュル24時間レースも、ずっと座っていられるシートがあるからこそ、長時間のハードなレースを走りきれるのである。
一見すると快適そうな純正シートは腰痛の温床
いわゆる「バケットシート」にも種類がある。ざっくり言うと、レーシングカーやサーキット走行に使われるリクライニングしないシートを「フルバケットシート」。カラダを包み込む形状になっているが、リクライニングできるシートを「セミバケットシート」と呼ぶ。
腰痛持ちの人にこそオススメしたいのがバケットシートだ。なぜなら、これはシートメーカーが作り上げた理想の形状であるから。
そもそもクルマを運転するとき、自己流のドライビングポジションで座っている人が多い。プロドライバーはある程度のセオリーに基づいてドライビングポジションを決めていて、耐久レースではほかのドライバーとの兼ね合いもあるので、ほとんど同じポジションで乗っている。しかし、マイカーしか乗らない一般ユーザーの場合、自己流ポジションになり、それが知らず知らずのうちに腰痛を引き起こしている可能性もある。
またその原因がシートにあることも多い。純正シートがすべての人の体型にマッチするわけではないし、シートは使い込むと内部のスポンジもスプリングもヘタってきて、どんどん沈み込むようになってくる。それが腰痛の原因のひとつになることもある。10年も使っていたら沈み込みすぎて当たり前である。
つねに正しい角度で座れる「フルバケットシート」
対するフルバケットシートは樹脂製のシェルに薄い表皮とスポンジが貼られる程度なので、沈み込みすぎることはない。つねに正しい角度で座れるので腰痛も起きにくいのである。それゆえ、耐久レースでももちろんフルバケットシートが使われている。1度乗り込んだら2時間以上ドライブすることもあるが、ドライバーは腰痛とは無縁である。
だからこそフルバケットシートなのである。リクライニングしないからこそ、倒し過ぎも起こし過ぎもない。調節は取り付ける角度だけ。座面がやや前上がりになるようにして、お尻が前方に滑らないようにするのがセオリー。そうすると自然と背もたれはやや寝て、体重の半分はお尻ではない背中で受け止めるようなイメージで、自然と正しい姿勢で乗車することになるのだ。
ホールド性と利便性を兼ね備える「セミバケットシート」
セミバケットシートでもカラダのホールド性が高く、変な座り方ができない。だからこそ、知らずしらずのうちに腰に負担がかかるような座り方にはなりにくいので、これもまた腰痛が起きにくいのである。
リクライニングできるシートで例を挙げると、「ブリッド」でいえば、ガイアス/ストラディアがフルバケ並みのホールド性があってリクライニングもできるので、さまざまなクルマに合わせやすい。「レカロ」ではスポーツスターがそれに該当するモデルだ。
クルマを乗り換えても使えるので買う価値は十分
実際、筆者も20年にわたりバケットシートを使っているが、それによって腰痛を起こしたことはない。腰痛持ちではあって、ノーマルシートで腰が痛くなることもあったが、フルバケットシートに座るとむしろ正しい姿勢に正されて、腰痛が治る感覚さえあるのだ。
コストはフルバケットシートだと約10~20万円くらいで、シートレールで約2万円くらいが目安。リクライニング機構のあるセミバケットシートだと、約15~30万円とシートレールが約2万円ほど。決して安くはないが、シートはクルマを乗り換えても使えるので、長く愛用できるアイテムでもある。そして、なにより快適なドライブを実現してくれるもっとも重要なピースのひとつ。コストパフォーマンスは決して悪くないパーツなのだ。