定員稼ぐためにミニバンにも採用した!
使い勝手が秀逸だった懐かしのベンコラ車
すっかり死語となってしまったのが「ベンコラ」。これはベンチシートとコラムシフトを足した造語で、ベンチシートは前席がベンチのようにセンターコンソールなどで仕切られていない、つながったシートのこと。そしてコラムシフトは、ステアリングコラムにある変速機のシフトレバーで、昔はMTやATに関わらず採用されていた。こうした懐かしのベンコラ採用モデルを振り返りたい。
ベンチシートの採用は必然だったか!?
ホンダS-MX/1996年11発売
まずは走るラブホと揶揄されたホンダのS-MX。「恋愛仕様」を謳って登場したS-MXは、ステップワゴンのコンパクト版といった作りで、昔のアメリカ映画に出てくるクルマを彷彿とさせるインテリアを採用。映画のなかではまさにデートシーンで使われることが多く、S-MXがベンコラを採用したのはクルマのコンセプトを考えると必然だったと言える。
くつろげる快適シートが自慢!
トヨタbB/2000年2月発売
おそらくS-MXと同じ理由で若者向けをコンセプトにベンコラを採用したのがトヨタbBだ。運転席と助手席の間に小物収納はないが、ドライブデート中に車内オーディオでまったり音楽を楽しむ場面を想定したと思われる、まさに恋愛仕様であった。もちろん運転席と助手席の間にアツアツのふたりを邪魔するものがないベンコラは、恋人同士にとってクルマが特別な空間だった時代では大切な要素だったのだ。
寸詰まりな6人乗り変わり種ミニバン
日産ティーノ/1998年12月
続いては珍車と言える日産ティーノだ。3+3の6人乗りをコンセプトに登場したティーノは、前席が完全なベンチシートであり、中央席が狭かったことから補助席的な扱いで子ども専用席だった。テレビCMに当時人気のMr.ビーンを起用するも一世代で終了。この変わり種の2列シートミニバンは、全長を抑えながらも6人乗りという多人数乗車を成立させるために生まれた仕様であった。2004年7月にはホンダ・エディックスがまさに同じコンセプトでデビューしたが、3+3の6人仕様はティーノと同じでもエディックスはインパネシフトだったため、残念ながらベンコラには該当せず。
軽自動車の規格改定でサイズアップ!
2代目ホンダ・ライフ/1998年10月発売
軽自動車では2代目ホンダ・ライフ(※1971年発売の元祖ライフは除く)もベンコラだった。このライフは1997年4月に初代モデルがデビューするのだが、翌年に軽自動車の規格が改正されたことで、初代ライフは発売から1年半でモデルチェンジを余儀なくされた。また、初代ライフはフロアシフトを採用していたが、2代目ではコラム式に変更。続く3代目(2003年9月発売)ではインパネシフトに変わった。このシフトレバーの位置が立て続けに変更された理由は、軽自動車の限られた空間のなかで広い室内をいかに実現するかを追求した結果であり、運転席と助手席の間に突起物がない方が、乗員が移動しやすいというメリットがあった。
北米生まれのFF高級車は下位グレードで採用
「トヨタ・プロナード/2000年4月発売」
変わり種としてはトヨタ・プロナードもベンコラだった。ただし、上位グレードの3.0(Gパッケージ含む)はフロアシフトを採用しており、下位グレードの3.0Lにだけコラムシフトとマルチパーパスベンチシートが装備された。この3.0Lがまさにベンコラで、写真を見ていただければわかる通りベンチシート仕様はアメ車テイストが強まるように感じる。ちなみに北米トヨタのFFフラッグシップでもあったプロナードだが、一時期日本でも北米仕様のアバロンの姉妹車としてデビュー。ボディサイズから高級車と思われがちだが、国内には王様クラウンがいたワケで存在感を発揮することができなかった。
【まとめ】’70年代はセダンやワゴンでもベンコラが主流であった
過去にはトヨタ・クラウンや日産セドリック&グロリアもベンチシート+コラムシフトが主流であったし、初代センチュリーもベンコラだった。ベンコラは、元々が北米人気の影響だろうが、クラウンやセドリック&グロリアは歴代コラムシフト車が多く、タクシーでも長らく使われていた。
現在中古車でこの時代のクラウンやセドリック&グロリアが一部のユーザーから支持されているのは、ベンコラが(時代が)2周回って新しいというからではないだろうか? ワゴン仕様では8人乗りなどもあったし、スタイリングからは想像できない優れた使い勝手に多くの人はびっくりするに違いない。
つまり、ベンコラはゆとりある室内空間の確保とユーティリティ性に優れる点が魅力だったが、残念ながらコラムシフトの操作性の悪さとシフトポジションを認識しづらいという使い勝手の悪さから、その多くがインパネシフトに代わりベンコラは絶滅に追い込まれてしまったのである。