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86にV8! ハコスカにロータリー! アメリカじゃ当たり前カスタムのエンジン換装は日本でも可能?

RB26を積んだインプレッサWRX

大排気量エンジンに載せ替えるスワップは
アメリカではメジャーなカスタム

 搭載していたエンジンを降ろして、別のエンジンに載せ替える「エンジンスワップ」。日本ではエンジンに手を加えパフォーマンスを高めるカスタマイズが主流だが、アメリカでは自動車メーカーから積み替え用の新品エンジン「クレートモーター(木箱に入ったエンジン)」が用意され、スワップ用のキットも充実していることもあり、手っ取り早くパワーアップするため排気量が大きなエンジンを搭載する人も少なくない(車検制度が基本的に存在しないアメリカとは比較すべきではないかもしれないが……)。また、内部に手を加えたチューンドエンジンよりも負荷は少なく、安心して乗れることも人気の理由のひとつだ。

性能向上だけじゃなく長く乗り続けるための手段としても注目!

 一方、車検制度の厳しい日本でエンジンスワップが盛んなカテゴリーはドリフトと旧車だろう。前者はドリフト競技のトップカテゴリー「D1GP」が過激の一途をたどっており、勝つためには1000馬力級のパワーが必要になるため、実績があり耐久性に優れた大排気量エンジン(トヨタの2JZ-GTEが主流)にスワップするのが王道だ。

 後者はチューニングが確立されていなかった1980年代後半まではパワーアップ=大排気量エンジンを載せるのが定番だった。その代名詞と言われたのが日産のL型エンジンで、2Lから2.8Lへと載せ替えるのが盛んに行われていた。ただ、最近はエンジンのパフォーマンスアップだけでなく、ベースエンジン、エンジン周辺パーツの製造廃止によって、長く乗り続けるためにやむなく新しいエンジンをチョイスするオーナーも増えている。

 また、ひと昔前まではインジェクション仕様のエンジンをキャブ化して搭載するのが一般的だったが、現在は社外のインジェクションキットの登場やフルコンの普及により、キャブ以外の選択肢も見られるようになった(キャブが高価になり、精度の低いものが存在するなど供給が不安定なのもある)。ただし、最新のエンジンは構造的に複雑(チューニングが確立していない)かつマネージメントも煩雑で簡単に載せ替えといかないため、メインとなっているのは一世代くらい前のエンジンだ。

安く抑えたいなら新品供給があるモジュール設計エンジンの活用がベスト

 では、エンジンスワップについて具体的な話を進めていこう。まず、費用をなるべく抑えたいのならば、現在でも新品の供給があり、大量生産を考慮されたモジュール設計のエンジンを使うことだ。一例を挙げると先代ロードスター(NC型)に搭載されたMZRエンジンで、ロードスター用は2Lだが、上級のアクセラやアテンザには2.3L、2.5Lが存在し、補器パーツのみロードスターから移植するだけでスワップできる。

 費用は新品エンジンの使用で約70万円~、リサイクルエンジンを活用すれば50万円以内に収まる。50万円が安いか高いかは個人の判断によるが、仮にエンジンが壊れて載せ替えする場合、同じエンジンを換装するのとほぼ同じ予算、信頼性を担保しながら大幅に出力向上ができるこのスワップはアリだと思う。

 また、自然吸気エンジンしか設定がない軽自動車に同系のターボエンジンを載せるのも一定の人気がある。これなら軽自動車の枠を超えることなく重量級のプチバン系で走りを底上げできる。費用は約40万円~が多く、新しい車種ほど費用が高くなる傾向だ。

異なるメーカーのエンジンを載せるのは変更箇所も多く難易度が高い

 次にスワップしやすいのは同世代&同一メーカーの車種。代表車種は8~10代目のスカイラインやS13~S15型シルビアなどで、例を挙げればR32スカイラインにS13シルビアのSR20エンジンを搭載する場合は、シルビア用のメンバーを移植することで大きな加工なくエンジンを載せることが可能だ。

 ミッションは多くのショップで変換ベルハウジングが用意されているので、面倒は比較的少ない。車種とエンジンを入れ替えた場合も同様な手法でOKだし、同系列のローレルやセフィーロなど問題なく対応できるため、一時ドリフトシーンで定番となっていた。ただ、現在はSRやRBは価格が高騰し、マーケットにも良い中古エンジンが減っているので、費用を抑えてのスワップは難しくなりつつある。

 さらに難易度が高いのは、メーカーのまったく異なるエンジンのスワップ。そのようなことを前提に設計していないため、まずは「エンジンルームに収まるか?」から考えなくてはならない。それに合わせてエンジンマウントやオイルパンなどの加工も必要。

 さらにハーネス関係をいかに合わせるか、エンジンだけでなくミッションまで流用するのか、既存のミッションをアダプターで繋げるか? さらにはプロペラシャフトが負荷の掛かる角度にならないか、メーターやエアコンをどうやって動かすかなど、変更箇所とチェックポイントは多岐に渡り、トラブルを出すことなく、帳尻を合わせてくかはショップの技量にかかっている。大手術となるため、費用も100万円は軽く超えるので、かなりハードルは上がるのだ。

公道を合法に走らせるなら「構造変更」「記載変更」も必要になる

 そして、これはスワップ全般に言えることだが、大幅なパワーアップしたら、駆動系/足まわり/ブレーキなどの強化は必須。また、エンジンスワップした車両で公道を合法に走るためにエンジン系は「構造変更」、ミッションやドライブシャフトを交換した場合は「記載変更」が必要になる(※いったん車検を切る必要あり)。改造箇所が増えれば増えるほど確認項目が増え、費用はかさむのはもちろん、一般的な整備工場では手に負えず、専門知識のあるショップ探しも必要となる。

 エンジンスワップは改造レベルが上がるほど手間も予算もアップし、しかも多くの場合は市場価値がオリジナルよりも下がるため、施工にはそれなりの覚悟は必要だ。ただ、長く乗るためにオーバーホールを検討している人にとっては非現実的な価格ではなく、今まででは味わえない世界を体感させてくれるのは間違いないだろう。オリジナルのチューンか、スワップかその選択はオーナーの好みだが、「思い出の詰まった愛車をいつまでも刺激的に楽しみたい」オーナーにとって魅力的なカスタマイズではないだろうか。

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