いすゞオリジナルのベレルに続いて登場したベレット
ヒルマン・ミンクスの生産と並行して、いすゞが独自に開発していたオリジナルモデルの1号車となったのが、1961年の東京モーターショーでお披露目されたベレルでした。
トヨタのクラウンやプリンスのグロリア、日産のセドリック、さらにベレルの2年後に登場する三菱のデボネアも含めて、国産フルサイズ・セダンでした。そしてベレルが登場して2年後の1963年11月にリリースされた小型乗用車がいすゞ・ベレットです。
ちなみにベレルはいすゞ(五十鈴)に因んで鈴(ベル)と50を示すローマ数字のⅬ(エル)を繋げて命名されたものでしたが、ベレット(Bellett)は、そのベレル(Bellel)の末尾に小さなものを示すettをつけた、いわばベレルの妹分、ということになります。
これはアルファロメオのジュリアとジュリエットの姉妹関係に似たネーミングですが、ちなみにアルファロメオでは妹分のジュリエットが先に誕生しているのですが……。またベレットは、日本で最初にGTを名乗ったモデルとして有名です。ただ発売時期に関してはスカイラインGTの方が1カ月早く発売されていて、この勝負は痛み分けとなっています。
それはともかくベレットGTです。4ドアセダンをベースにした2ドアクーペで、セダンに搭載されている1.5Lのプッシュロッド直4をベースに、1.6Lまで排気量を拡大するとともにSUのツインキャブを装着して最高出力は88HPを発生。また国産車としてフロントにディスブレーキを初採用するなど、スタイリングに加えて装備やスペックでもアピールしていました。
そんなベレットGTに、さらなるハイパフォーマンスを与えたホットモデルが登場したのは1969年の9月。前年から耐久レースのRクラスで活躍していたベレット1600GTXを、ロードモデル用にチューンし直したベレット1600GTRです。
エンジンは1年前にデビューしていた、117クーペにも搭載されている1.6Lの直4ツインカムエンジンを採用。最高出力は120HPにまで引き上げられていました。ただしパワーを絞り出したがために使い難くなるようなケースも世間には散見されましたが、ベレット1600GTRが搭載していたG161Wエンジンは、そうしたデメリットとは無縁。
プッシュロッドのころから中低回転域でのトルク特性には定評がありましたが、それはこのツインカムユニットでも変わりありませんでした。一方、エンジンのパワーアップに対応するよう、シャシーも強化されていました。ともにコイルで吊ったフロント:ダブルウィッシュボーン、リヤ:ダイアゴナル・スウィングアクスルというサスペンションの基本形式は不変でしたが、スプリングはよりヘビーデューティなものに交換されています。
またエクステリアも手が入れられていて、フロントバンパーが左右分割式となり、その間に2個で一対のフォグランプを装着。そしてグリルはブラック塗装された網目状のモノに置き換えられ、DOHCのエンブレムが誇らしげに映っていました。
1600GTRは後に登場した1800GTやオリジナルの1600GTとともに、“和製アルファロメオ”との評価を受け、今でも根強いファンから支持されています。ちなみに、スカイラインのGT-Rとは異なり、ベレットはGTRとTとRの間の“-”ハイフンがありません。また1970年のマイナーチェンジ後はGTRからGT typeRへと変更されていました。