オールジャンルな巨大Kカーミーティングだから見つかったお宝車
ドレスアップコンテストはなく、オフ会ノリの緩い雰囲気で開催される「KING OF K-CAR MEETING」。軽自動車ならオールジャンル何でもOKなので、普段見ることのないレアなお宝車が登場するのもこのイベントの魅力のひとつ。今年発見したレア車は初代ハイゼットジャンボ(以下ジャンボ)だ。
現行車が初登場じゃない! 5世代&約40年の歴史を持つ長寿グレード
「えっ、ジャンボって現行モデルが初じゃないの!?」と思っている人は意外に多いんじゃないだろうか。確かにビッグキャビンを持つジャンボがクローズアップされるようになったのは、2014年登場の現行モデルかもしれないが、じつはこれが5代目。初代の登場は1983年で、来年で40周年を迎える歴史あるグレードなのだ。
ジャンボを知らない人のため簡単に詳細を説明しよう。ベースとなる軽トラック(以下軽トラ)の荷台は、1900mmの長物を積載を考えて設計されている。そのしわ寄せがキャビンにおよび、軽トラのシートはリクライニングなし、スライド量も最小限となっていた。
ただ、すべての軽トラユーザーが荷台をフルに使用しないことを前提に、キャビンを後方に伸ばしている。同時にルーフを高くすることで居住空間を広げるとともにリクライニング機構を備え、スライド量を拡大するなど快適性をアップしたモデルだ。また、先代モデルからはキャビンの下にスペースを設けて、1900mmを超える長尺ものを搭載できる構造となるなど、進化し続けている。
商用車の派生車ではなくレクリエーショナルビークルだった初代
現在はスズキのスーパーキャリイがライバルだが、過去にもホンダアクティのビッグキャブや三菱ミニキャブのスーパーキャブも存在した。ただし、長い歴史を持つのはハイゼットのみで、スーパーキャリイを除きいずれも撤退している。
ちなみに初代ジャンボはハイゼットの派生モデルではなく、乗用車モデルであるアトレーの派生車という扱いで、5速MT&4WDのみの設定は商用車というよりはアクティブに遊ぶ趣味車(レクリエーショナルビークル)を目指していたようだ。その証拠に専用のボディカラーが用意され、トラックとしては異例といえるほどカスタマイズパーツが豊富だった。
また、初代ジャンボは丸型ヘッドライトの上にウインカーを配した愛らしい風貌から「まゆげ」と呼ばれ、現行ハイゼットをベースにしたオマージュキットが販売されるなど、一部の層から絶大な人気を誇っている。ただ、生産終了から35年以上が経過しているので、本物を見かけることは皆無だった(東京オートサロン2022で歴代ハイゼットが展示されていたのは記憶に新しいが……)。
潰れていたクルマ屋さんの倉庫に眠っていた個体を交渉の末譲り受けた
KING OF K-CAR MEETINGで見かけたのは後期型。オーナーいわく「前期のグリルが付けたかった」と話してくれたが、正直どのような形状だったか思い出せない……。また、リヤのあおりに見える折り畳み式のステーは、長尺ものを搭載するときのストッパーだ。長年長尺は載せられないと思っていただけに、この事実は新たな発見だった。
オーナーはずっとまゆげを探していたそうで、知人を介して高知の潰れたクルマ屋さんの倉庫の奥に眠っている情報をキャッチ。オーナーと交渉して譲り受けた。オプションのカリフォルニアミラー付きの個体はボディの状態はよかったのだが、長年動いていなかったため、走り出したらどんどん壊れ、社会復帰するまで4~5カ月かかったそうだ。
じっくり室内を見たことがなかったので、オーナーに断りを入れて見せてもらう。550㏄時代のクルマなので車幅は1400mm。そのため、外側にリクライニングレバーを付けるとシート幅が狭くなるのか、レバーは内側にあった。
コレクションとして保存するのではなく、仕事の足として現在も活躍中
4WDの切り替え用レバーはシート間にレイアウト。パーキングブレーキがシート前方のフロアにマウントされているので、4WDと知らない人は切り替え用レバーをパーキングブレーキと間違えそうだ。後方のサイドウインドウは歴代で唯一開閉が可能。開けていると空気の流れが良く、想像以上に涼しいそうだ。
オーナーは前述したオマージュキットも気になったそうだが、「やっぱり本物だろう」と根気よく探し続けたそうだ。手を加えたのはホイールとタイヤだけで、コレクションとして保管するのではなく、晴れた日は仕事の足として現在も活躍中。「分かる人は振り向いてくれる」と笑顔で話してくれた。まゆげ以外にもホンダの初代バモスも動態保存しているそうで、いずれはそちらも拝見したいものだ。