馬力アップかサスペンション強化か? 正しいタイムアップ術とは
サーキットを走る以上は誰もが気になるラップタイム。ある程度までは『慣れ』でタイムを伸ばすことができるが、遠からず大きなカベに当たり四苦八苦することになる。セッティングを見直したりほかのドライバーを参考にする正攻法に加え、あまり表現はよくないが「タイムをお金で買う」のもひとつの手だ。
具体的にはクルマをチューニングすることで、そのメニューは大きくふたつに分けられる。ひとつはエンジンのパワーを上げてストレート区間でタイムを縮める方法、もうひとつはブレーキを含むサスペンションを煮詰め、コーナーを速く走る方法だ。
ドラテク磨きを追求するならパワーアップは二の次でOK!
運転のテクニックを磨くという目的があるなら、答えは聞くまでもなくパワーよりサスペンションだ。あらためて理由を考えてみたい。確かにブーストアップやタービン交換でパワーを上げれば、多くの人は自分のベストタイムを更新できるだろう。ただし直線でアクセルを踏むのにテクニックはほぼ関係なく、ドライビングのスキルが磨かれた結果のタイムアップとは言い難い。
それどころかクルマの速さを自分の速さと勘違いし、運転がラフになってしまう可能性も十分にあり得る。余りあるパワーを有効に使うにもテクニックが必要とはいえ、初級者~中級者なら先にやるべきことは数え切れないほどあり、エンジンのチューニングは後まわしでも一向に構わないだろう。
サスペンションを強化した上でセットアップを覚えることが大切
それよりも優先すべきはサスペンション。ノーマルのままで頑張っている人ならば車高調に交換、すでに交換しているならスプリングレートを見直すなど、パワーとは無関係な部分への投資を強くオススメしたい。直線の速さは変わらないのでインパクトに欠けるかもしれないが、車高/減衰力/アライメントを少し変更するだけで走りは変わるし、成功にしろ失敗にしろ試した分だけノウハウは蓄積されていく。もし即座にタイムアップに繋がらなかったとしても、ドライバーとしての引き出しは間違いなく増えるのだ。
ウデを磨いてからエンジンをイジったほうがパワーを活かせるのは必然だし、タイヤやブレーキのセッティングも含めて考えれば伸びしろはさらに大きいはず。
【まとめ】シャーシが脆弱だと結局は強力なエンジンは持て余すだけ
もちろん暴力的な加速が面白いのは理解できるし、手っ取り早くタイムを出したい気持ちも分かる。しかしサーキットで『直線番長』は決して好意的な評価じゃなく、むしろ「パワーはあるけどウデはない」とネガな感情が込められる場合も多い。手に負えないパワーを持て余して振りまわされる姿ではなく、ライバルに直線で離されてもコーナーで追い詰める姿にこそ、サーキットを走る多くのドライバーは憧れを抱くはずだし、タイムアップの正統なプロセスといえるのではないだろうか。