ボディサイズは軽自動車かコンパクトカーのほうがいい
運転のしやすいクルマとは、どんなクルマだろうか。もちろん、動力性能やアクセルレスポンス、ステアリングの操作性に小回り性などもかかわってくるのだが、誰にでも分かりやすいのは、視界とボディの見切りの良さではないだろうか。とくに高齢者ともなれば、前方、後方、そしてボディ全周がしっかり「見える」ことが、感覚的にも運転のしやすさにつながるはずだ。
とはいえ、日本の道路や駐車環境においては、見切りと視界がいいならOKか? というわけではない。見切りと視界がよくてもボディサイズそのものが大きすぎれば、さまざまな場面で運転のしにくさを感じ、大変な思いをすることになりかねない。視力や体力、そして運転技能が衰え始めた高齢者にとっては(運転技能が完全に衰えたら、免許返納です!!)、見切りと視界の良さに加え、やはりクルマはコンパクトなほうが、運転のしやすさを実感しやすいはずだ。
具体例を挙げよう。筆者の近所に住む70代の夫婦。日産党でずーっとスカイラインに乗り継いできた。しかし、とくに奥さまのほうは、免許があるにもかかわらず、運転から遠ざかっていた。そして奥さまの自らの不注意による追突事故をきっかけに、クルマを買い替えることに。そこでモータージャーナリストである筆者が薦めたのが、日産の軽自動車だ。衝突軽減ブレーキを含む先進運転支援機能の搭載はもちろん、SOSコール、日産コネクトナビによる安心を伝えたところ、即、購入。以来、スカイラインクラスの運転に躊躇していた奥さまも、今では毎日のようにスイスイと軽自動車を走らせているのである。
高齢者に薦めるならまずは軽自動車
というわけで、高齢者にオススメの、見切りと視界がいいクルマとしてまず薦められるのが軽自動車だが、どんな軽自動車でもいいわけではない。できれば、着座位置が高めで、ダブルAピラーを採用する、爽快な見晴らし視界、斜め前方や後方視界にも優れたクルマがベターだ。
ホンダN-BOX/スズキ・スペーシア/ダイハツ・タント/日産ルークス/三菱eKスペース
そう、N−BOXやスペーシア、タント、ルークス、eKスペースといったスーパーハイト系軽自動車である。当然、軽自動車のボディサイズでスクエアなボディ形状だから、見切りも文句なし。ついでに言っておくと、老人会のお仲間を後席に誘う際も、低床&両側スライドドアによる乗降性に喜んでもらえるに違いない。
スズキ・ワゴンR
両側スライドドアまでは不要、というなら、軽自動車のハイト系ワゴンもいい。なかでもワゴンRの前方視界は、水平基調のすっきりしたインパネデザインによる、ロマンスカーの最前列席的なパノラミックな視界が特徴。筆者であっても運転席に座るたびに、即、運転のしやすさを実感できるのである。
小型車でおすすめのクルマとは?
トヨタ・パッソ
できれば、軽自動車でなく、小型車がいい……というなら、このAuto Messe Webで「高齢者が運転しやすい、視界のいいクルマ」として何度も紹介してきたフィットのほかに、パッソがある。
運転が苦手と感じる女性ユーザーもターゲットとしたトヨタ最小のコンパクトカーで、1525mmという5ナンバー車の多くが採用する、規格ギリギリの1695mmより幅がないナローボディが魅力的だ。軽自動車並みの最小回転半径4.6mの小回り性、駐車性の良さに加え、往年のミニのようなボンネット左右の膨らみがあり、それが視界に入ることでボディの見切りが一段とつかみやすくなる効果があるのである。
スズキ・クロスビー
ミニの話が出てきたところで、なぜ、ミニに人車一体感があるドライブ感覚が得られるのだろうか。じつは、ボンネット左右の膨らみに加え、インパネ奥行きの短さ=ドライバーに対するフロントウインドウの近さ、立ったAピラーが功を奏しているのだ。
そのあたりを国産コンパクトカーに当てはめてみると、クロスビーが候補に挙がる。クロスオーバーモデルで若々しいデザインだから、高齢者にしてみれば少し乗るのに抵抗があるかもしれない。
しかし、前席の着座位置がクロスオーバーモデルらしく高めで、Aピラーが立ち気味かつ最小回転半径4.7mの小回り性の良さ、1670mmの幅狭ボディとボンネット左右の膨らみの合わせ技で、運転のしやすさは文句なしと言っていい。
ホンダ・フリード
高齢な両親がおもに運転し、家族も多いというなら、5ナンバーサイズのコンパクトミニバン、ホンダ・フリードもいいかもしれない。
フロントウインドウ下端はドライバーから遠いものの、ミニバンらしく運転席の着座位置は高く、見下ろし感覚の運転視界で斜め前方の死角、適切な位置にあるドアミラーに寄る視線移動量少なさ。そしてサイド&リヤウインドウの面積の大きさ、5ナンバーサイズのボディもあって、前後左右の車両感覚がつかみやすい1台と言える。