入手困難なメーカー謹製コンプリートカーの改造はアリ?ナシ?
自働車メーカーのワークスブランドから発表される高性能コンプリ―トカー。エンジンから足まわり、ブレーキに至るまでベース車の性能を高め、限定で販売される純正チューンドマシンである。パフォーマンスはもちろん、その希少性から先着順の場合は発表後即完売。抽選の場合は販売数の何倍もの応募が殺到するなど、その人気っぷりは半端ない。2022年の東京オートサロンで発表されたGRMNヤリスは500台の販売数に対して、6倍となる3000人異常の購入希望者を集めたことが話題となった。
メーカーのお墨付きで新車保証もあるコンプリートカーの魅力
メーカー製のトータルコンプリートカーが登場したのは1988年。オーテックから発売されたスカイラインGTSオーテックバージョン(R31型)が最初で、その後、道路運送車両法の「規制緩和」(1995年)以降に開花していく。開発は多くがNISMO/TRD/オーテック/MUGENなどのワークスブランドが担い、一度ラインオフしたクルマを架装するため、生産台数も少なくほとんどが持ち込み登録であった。
保証も自働車メーカーではなく、ワークスブランド独自のものであることも多かったが、現在のコンプリートカーは量産の品質を維持したままメーカーラインで製造。それによって生産台数も増える傾向にあり、さらに一般車と同じメーカー保証が付くなど安心もプラスされている。
現在の代表作といえばトヨタのGRMNとスバルのSシリーズで、前者はGR専用ライン「GR Factory」で熟練工が製造にあたり、後者はラインアウト後にSTIで調律が施されている。ともに共通しているのは人の手を介しているところで、量産車にない味があるのが一番の魅力だろう。
ベストバランスを求めたが故に個性に欠けることも……
さて、ここからが本題。トータルで性能が磨き上げられたメーカー謹製のコンプリートカーのチューニングはアリかなしかという議論。これはちょっと逃げかもしれないが「オーナーがクルマに何を求めるかで変わる」というのが答えかと思う。メーカー製コンプリートカーは高性能ではあるが、メーカー基準に沿って教科書通りに開発されたマシンで、スタンダードなクルマと同様の耐久性を持たせる必要があり、無理な改造をしなければ10万kmまで不満なく性能を維持することができる。乗り味も街乗りである程度不満なく使えることも求められる。
そうなるとサーキットでは気持ちよく走れるが、タイムを極めようとすれば物足りなく、車高も標準車よりはローダウンされてはいるものの、レーシングカーのように低いかと言われればそうでもない。ビジュアルに関しては完全にオーナーの好みになる。