ボディ下面を流れてきた空気をリヤで拡散
空力パーツのなかでも、リヤウイングやフロントスポイラー、カナードなどは、見ただけでなんとなく“効きそう”というのがわかる。だが、後輪の車軸あたりからリヤのバンパーエンドに向かって跳ね上がるように装着されているリアディフューザーは、何を狙っているのか、わかりづらいかもしれない。
しかし、レーシングカーをはじめ、ラリーカーにまで装着されており、その空力的効果はウイングなどほかのエアロパーツ以上のものがあるといわれているほど。その効果と仕組みを簡単に説明してみよう。
まず「ディフューザー」という名称だが、直訳すると「拡散、散布するもの」になる。つまり、ボディ下面と路面の間を流れてきた空気を、後方に向けて拡散するパーツだと思えばいい。ボディ下面を流れてきた空気をリヤで拡散すると何が起きるのか。
空気や液体などの流体は、その流れを絞ることによって流速を増加させ、低速部に比べて低い圧力を発生させる性質を持っている。これがいわゆるベンチュリー効果。ホースの先端をつまむと水が遠くまで飛ぶ、あの原理のことだ。
そして「流体の流速が速くなると圧力が低くなる」=「ベルヌーイの定理」に従って、ボディ下面に負圧=ダウンフォースを発生させるというシロモノだ。
要するに入口が広く、中央が狭く、出口が広いパイプ上の空間を作れば、断面積の狭い部分で流体(空気)の流速が速くなり、低い圧力が生じるというもの。だからリヤディフューザーは、後ろに向かって空気を拡散しやすい形状になっているというわけだ。
車体中央を狭くといっても、レーシングカーと違い、最低地上高が9センチ以上必要な市販車では、あまり効果が期待できないと思うかもしれない。しかし、東海大学が実車の1/5のモデルで風洞実験を行った実験では、量産セダンでもディフューザーがなければほぼダウフォースが得られないのに、同じボディにディフューザーを取り付けると、ダウンフォースが68倍になったというデータがある!
しかもダウンフォースが増えたのに、ドラッグはわずかに軽減している点(約0.7%)も見逃せない。ただし、こうした効果を得るには、単純にリヤディフューザーを装着すればいいというものではない。まずボディの前方からよりたくさんの空気をボディ下面に送り込んで、車体中央の下面はできるだけフラットにして空気を抵抗なく、スムースに流す形にすることが重要。
もうひとつ、リアディフューザーは幅が広いので、端と中央とで流速や方向にバラツキが出る。そこで本体は、垂直の仕切り板=バーチカルフィンを設けることで整流し、効率を上げるのもポイントとなる。なお、バーチカルフィンは機能面だけでなく、ドレスアップ効果も大きい。