トヨタでもつまずいたダイハツとの協業モデル
「トヨタ・パッソセッテ/2008年発売」
自分たちで技術を磨きながらも、ライバルが現れればしっかりと対抗措置を取り、全方位でスキがない日本を代表するトヨタでも、結構やらかしたモデルが出るから面白い。そのひとつがダイハツ生産のパッソセッテ(ダイハツ・ブーンルミナスのOEM車)だ。
初代シエンタの後継として登場(一時期は併売)したパッソセッテは、コンパクトカーのパッソに3列目シートを装備したある意味攻めたモデルであったが、3列目シートはあくまでも補助席的な扱いであった。コンパクトだが多人数乗車できるという志は評価したいところだが、2012年に販売終了。
ベースとなったパッソとブーンは、開発と製造がトヨタとダイハツにまたがり、複雑な出自を持つモデルであった。そのうえ登場時のキャッチコピーは「プチ・トヨタ」を謳い、トヨタ車であることが強調された。しかし、ステップワゴンやセレナ、ノア&ヴォクシーといったMクラスミニバンが勢力を拡大するなかで、小さなボディゆえに運転のしやすさはあったものの、ミニバンとしての使い勝手の悪さやコンパクトカーの域を脱することができなかった凡庸なデザイン。さらに、ヒンジドアのミニバンだったことからトヨタと言えども販売台数を伸ばすことができなかった。
ガラスルーフになるシザースドアが重すぎた
「トヨタ・ セラ/1990年発売」
最後は、たぶん売れても売れなくても困るのだろうなぁなんて思わせた、トヨタの異端児であるセラだ。昔からあるヒンジ式ドアと後部にスライドするスライドドアはみなさん馴染みがあると思うが、セラはランボルギーニ・カウンタック同様のシザースドアを採用(バタフライやポップ式と呼ぶ場合もある)。それをコンパクトカーに採用したのだから面白い。
さらにドアの上面であるルーフ部分もガラス製で、複雑と言えるドアの開き方とコンパクトカーながら不思議な開放感、日差しの強い真夏はきつかったが、これが両立できた希少なモデルであった。ベースとなったのは当時のトヨタのエントリーカーであるスターレットで、ドアの開閉が重かったことと(電動であれば違ったかも)や、目立つことを嫌うと言われる日本人の気質に合わなかったのか、サイズ良し、スタイル良しのいいこと尽くめでもヒットモデルとはならず。
しかしながら、個体が少ない希少車ゆえの中古車人気はそれなりに高く、30年以上前のクルマでありながらベースとなったスターレットでは望めない価格で販売されている。トヨタは遊び心でセラを発売したのだろうが、このモデルも一周回って中古車市場で人気を博している。おそらくセラのようなクルマはもう二度と出てこないだろう。バブル期ゆえの遊び心か、挑戦か。自動車の電動化が急激に進むなか、自動車メーカーには今後も遊び心を失ってほしくはない。発売時は不人気でもいつどこで価値があがるのかは誰にも分らないのだから。