アメリカンカスタムの祭典「ストリートカーナショナルズ」には「ノーズブラ」勢力も健在
2022年5月15日(日)、3年ぶりにお台場で開催された「ストリートカーナショナルズ」(略してSCN)。アメリカのカスタムカルチャーを発信する「ムーンアイズ(MOONEYES)」が、1987年から開催している国内最大級のカスタムカーショーだ。エントリー台数1200台の会場から、いまでは知る人も少なくなった「ノーズブラ」でアメリカンにスタイルアップしていた国産車たちを紹介しよう。
ノーズブラの起源はポルシェの実験車カモフラージュ
かつてカリフォルニア流カスタムの定番アイテムだった「ノーズブラ」。英語でもそのまま「nose bra」で、ほかに「フードブラ」とか「ボンネットブラ」とも呼ばれるがクルマのフロントマスクを覆うビニールや合成皮革、あるいは本革の布地のことで、ほとんどの場合、色はブラックだ。
ノーズブラの始まりとされているのはカリフォルニア州にあったクルマの内装ショップ「コルガン・カスタム」で、当時の社長ビル・コルガンはこう回顧している。
「1960年のある日、ロッキード社のエンジニアたちがボロボロの布切れを持ってきました。“こりゃ一体なんだ? ゴジラの貞操帯か?”と言ったら、“これはポルシェの工場で新型車のロードテストに使っている保護カバーで、非公式に貸してくれたものです”という答えが返ってきました。彼らの依頼に応じてドイツ製のカバーをデザインを一新し、何週間もロードテストして、12枚のカバーを完成させました」
「それから10年後、ポルシェ仲間からの依頼で911シリーズ用のカバーを作ることになり、356用のデザインをアップグレードしました。ドイツ語で「Steinschlagschutzshulle」(石の打撃から守るカバー)と書いたカバーを雑誌の広告に出して、略して「ブラ」と名づけたんです。はじめの数年はポルシェ用のカバーしか作っていませんでしたが、1975年ごろから、ほかのクルマのオーナーにも興味を持たれるようになりました」
それからカリフォルニアを中心に80~90年代にカスタムアイテムとした大流行した「ノーズブラ」。メーカーが純正オプションとして用意することもあり、たとえばマツダはFC3S型RX-7に「フロントマスク」の名でラインアップしていた。
デザイン多彩なノーズブラ、ただし着けっぱなしはNG
カモフラージュ用として生まれて、飛び石からのガードを目的としたアクセサリーとして流行したノーズブラ。日本ではいまや見ることも少なくなったが、アメリカではさまざまなクルマ用にリリースされていて、価格はそれほど高くなく、手軽に愛車の雰囲気をアメリカ化することができる。自作することも可能だ。
ただし、ずっと装着しているとノーズブラがボディに張りついたり、隙間の汚れが塗装を侵食したり、あるいは日焼け跡になることもあるので、1年中ずっと装着するのはお勧めできない。ここぞというときのドレスアップと考えたほうがいいだろう。
SCN会場でひときわ目立っていた1986年式ホンダ・シティカブリオレは、フロント全体を覆うノーズブラでUSDM(北米仕様)カスタム。もちろん、なるべくシワなくピッタリと装着するのがオシャレの基本となる。