昭和生まれの実用ワゴンをカッコよく乗りこなす
2022年5月15日(日)、3年ぶりにお台場で開催された「ストリートカーナショナルズ」(略してSCN)。アメリカのカスタムカルチャーを発信する「ムーンアイズ(MOONEYES)」が、1987年から開催している国内最大級のカスタムカーショーだ。1200台以上がエントリーした会場のなかには、クラウンバンやセドリックバン、サニー・カリフォルニアといった昭和世代のステーションワゴンたちが一大勢力を誇っていた。
ステーションワゴンというジャンルはアメリカ発祥
近年はSUVにその座を奪われてしまったが、実用的なファミリーカーといえばかつては「ステーションワゴン」だった。1989年(平成元年)にスバル・レガシィツーリングワゴンGTが登場し、スポーティなツーリングワゴンというジャンルが確立してからは、各メーカーでその人気に追随したものだ。
しかし昭和時代に生まれたステーションワゴンたち、メーカーやモデル、用途によって「ワゴン」「ステーションワゴン」「バン」「エステート」など呼び名はさまざまなれど、つまりはセダンをベースにリヤ部分をワゴンにしたタイプのクルマたちは、いまなおノスタルジーを誘うだけでなく、カスタムのベース車両として人気がある。しかもSCNのようなアメリカンカスタムの祭典にも、数々のステーションワゴンが違和感なくマッチしているのはちょっと不思議だ。
これは、元々ステーションワゴンなるジャンルが成立したのが、自動車先進国だった20世紀初頭のアメリカだったことも関係しているだろう。古くは1910年ごろ、フォードT型に木製ワゴンボディを架装した6人乗りモデルが登場していて、1920年代には各メーカーが「ウッディ」と呼ばれるタイプの車両を販売。戦前の段階で、商用車としてもファミリーカーとしても、ステーションワゴンは人気を博すようになっていた。
戦後の日本車もアメリカの枠組みを継承し、ステーションワゴンのモデルがセダンとともに販売された。経済成長とともに、豪華仕様として木目パネルが奢られたりしたのも、古き良きアメリカのイメージを踏襲したもの。それゆえに、キチンと手をかければ、昭和期の国産ステーションワゴンも立派にアメリカンなテイストを演出できるのだ。
CalなクラウンワゴンとGasserなビートル
お台場のSCN会場の一画で1970年式VWビートルと一緒に並んでいたのは、1988年式クラウン・ステーションワゴンのスーパーサルーンエクストラだ。この2台は茨城県の香取さんご一家で、旦那さんはビートルを「キャルルック」登場以前の「ガッサー(Gasser)」と呼ばれるスタイルでカスタム。エンジンは、純正1200ccのままスーパーチャージャーを搭載した激シブ仕様でドラッグレースを楽しんでいる。
そして奥さんが小さい子どもたちと荷物を満載してきたのがこちらのクラウン。1980年代のTRDカラーのサイドストライプを入れることでキャルな雰囲気をうまく演出していて、少ない手数で効果的にイメージアップしているのが好感だ。そして現役のファミリーカーとして使い倒しているのもまた尊し。
「顔面変更」で美麗なショーカーに化けたクラウンバン
一方、1990年式で同じ8代目のクラウンバンがベースでありながらも、まったく違った雰囲気になっているのがコチラ。神奈川県のカスタムショップ「AMC」の岸さんが、「K-LINE」勝木さんとともに昨年末に完成させ、「横浜ホットロッドカスタムショー」に出展したショーカーだ。
フロントグリルをワンオフ製作し、青をベースとしたクールで深みのあるペイントが美しいのみならず、フロントをローダウンすることでクラウンバンのシルエットが際立っている。クラウンバンのカッコよさをあらためて教えてくれる1台だ。