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FFレイアウトの広々室内でライバルを圧倒! パッケージングに優れた初代ホンダ・ステップワゴン

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

ホンダのクリエイティブムーバーの第3弾として登場

 こどもといっしょにどこいこう。少し辿々しい日本語の発音でそうナレーションが入り、「オブラディ・オブラダ」(ビートルズの原曲をセネガルのボーカリスト、Youssou N’dourがカヴァー)の明るく楽しげな曲に乗せ、画面のほうはアニメーションで展開。1996年5月8日発売のホンダの初代ステップワゴンは、実用車でありながら、そんな風に軽いタッチの訴求で登場したのだった。

 ご存知のとおり当時のホンダは、1994年10月登場のミニバンの初代オデッセイを皮切りに一連のシリーズとして“クリエイティブムーバー”を展開。その第2弾である1995年10月登場のSUV、初代CR-Vに次ぎ、第3弾として登場させたのが初代ステップワゴンだった。初代ホンダステップワゴン

 ところで初代ステップワゴンで画期的だったのが、今ではあたり前になった、FFプラットフォームを採用した点だった。当時、同じ5ナンバーサイズのミニバンにはトヨタ・タウンエース/ライトエース・ノア(3代目)、初代セレナ(初代)があったが、いずれもエンジンが前席下にある、それまでの1ボックスの発展型だったFRのキャブオーバー型であった。

 だが初代ステップワゴンは、FF横置きエンジンレイアウトを採用し、パワートレインをノーズ部分に集約した“1.5ボックス”のパッケージングを実現。さらにホンダが提唱していたマン・マキシマム&メカ・ミニマムにより低床フラットフロアのパッケージングとし、先行競合ライバル車に挑戦状を叩きつけたのだった。

 そもそもステップワゴンの車名からして「おっ!」と思わせられた。というのも遠く1972年、360cc時代の軽自動車で“ステップバン”なる機知に溢れたトールボーイ型のモデルがあり、その車名が受け継がれ、バンからワゴンになって蘇ったからだった。ステップバンも背の高い箱型がトレードマークだったから、イメージ的にもすんなりと受け入れられたし、「うまいネーミングを考えたものだ」と思わせられた。

ワンステップで車内に入れるところが自慢だった

 “クリエイティブムーバー”のなかの“ファミリームーバー”に位置付けられた実車は、“こどもといっしょに……”のキャッチコピーどおり、若いファミリーのうってつけの仕上がりのクルマになっていた。やはり魅力だったのは、スライドドアを開けた際のフロアの低さで、他車がステップを1段設けていたのに対して、ステップワゴンは床が低かったため、ワンステップで車内に入れるところが自慢だった。

 2WD車で床までの高さは465mmで、カタログの写真には犬が自分で前脚をかけているイラストまで入っている。ちなみにこの世代では、スライドドアはまだ左側片側のみの設定だ。

 もちろん室内は5ナンバーながら箱形形状のボディと相まって、じつに広々としていた。カタログの写真でもわかるように1〜3列目までの足元がスッキリとフラットになっており、これがじつに快適で、いわゆるウォークスルーは、1列目の左右も1列目から2列目へも自在に行えた。ベースグレードに2列仕様の5人乗りという設定もあったが、メインは8名乗りとしていた点も魅力だった。

 シートアレンジも当時のミニバンらしくじつに多彩で、回転対座シートとポップアップシートの2タイプを用意。“これはもう、楽しさ無限大だ。”とカタログに見出しが付けられているように、さまざまな使い方が可能で、文句なしの実用性を誇った。初代ホンダステップワゴン

 インパネの形状がVWのバンのようにシンプルでスマートなデザインだったし、シート表皮なども、それまでの国産1ボックス、ミニバンとは一線を画すセンスのよさで、まさに快適なリビングルームのような室内空間が構築されていたのだった。初代ホンダステップワゴン

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