約80社の出展と約5万3000人の来場者を集め無事閉幕
ホビー業界の見本市ならびにファンの交流イベントとして毎年7万人以上を集める「静岡ホビーショー」。昨年、一昨年は新型コロナウイルス蔓延の影響で一般公開を自粛、業者のみと規模を縮小し開催していたが、第60回を迎える2022年は4月以降に行動制限も解除され、3年振りに一般公開日(ただし、小・中・高校生招待日を含めて密を避けるため事案予約制とし入場人数を制限)を設定。会場となったツインメッセ静岡に約80社のメーカーと約5万3000人の来場者を集めて、大盛況のうちに幕を閉じた。
東京で開催される全日本模型ホビーショーより歴史は古く来場者数も多い
筆者的には何度も静岡ホビーショーには足を運び、毎年疑問に思っていたのが、なぜ静岡でホビーショーが開催されるのか、だ。一般的にその業界を代表するような大規模なイベントは東京や大阪、愛知など集客が見込める大都市で開催されることが多い。
もちろん、東京(一時は千葉の幕張メッセで開催されたことも)で「全日本模型ホビーショーも行われているが、開催は毎年秋と年度で考えれば静岡よりもあと(一般的には静岡が今年後半以降、全日本が来年前半以降に販売されるモデルが展示される)。例年、出展社数は全日本の方が多いにもかかわらず、来場者数も静岡のほうが多く、歴史も古い。マニアやファンからも「年度の最初は静岡詣でから」が定着しているようだ。
今回、色々調べてみると静岡ホビーショーが開催される静岡市は「模型世界首都・静岡」を掲げ、2020年度から地方創生の一環としてプラモデルの町を体感できる「静岡プラモデル化計画」をスタートしているようだ。
出荷額は国内の80%以上を占めて日本一! 町を挙げてプラモ活動を応援
組み立て前のプラモデル(ランナー)をイメージしたプラモニュメントを市内各地に設置(2022年4月現在で4カ所5基、公衆電話や郵便ポストのモニュメントもある)したり、静岡市産業振興課にプラモデル新興係を新たに設けている。これまでのホビー情報発信基地「静岡ホビースクエア」に加え、ホビーの町PR、ものつくりの楽しさ、業界の活性化を積極的に押し進めているという。ちなみに、静岡ホビーショー以外に浜松では浜松ジオラマグランプリ(今年は第11回が8月25日~を予定)が開催されている。
なぜ、静岡はここまでホビーに熱いのか? 数あるホビーのなかで静岡が圧倒的なシェアを誇るのは模型=プラスチックモデル(以下プラモ)で、タミヤ/ハセガワ/アオシマなど業界大手メーカーが本社を置き、バンダイも生産工場は静岡。その出荷額は国内の80%以上と他を圧倒する。プラモは缶詰/マグロ/お茶/桜エビと並ぶ静岡県を代表する産業だからだ。
盛んだった木材加工業から木製模型が誕生したのがすべての始まり
では、なぜ静岡はプラモの生産が盛んなのか。静岡は古くから水運を使って木曽や飛騨から木を運び、木材加工業が盛んだった。そのなかに木で教材、玩具を作る製造メーカーが数多く誕生したのがその始まり。
1950年以降にプラスチックモデルが外国から輸入されて以降は成型のしやすさ、再現性の高さから新素材に着目。材料を木からプラスチックへと移行し、現在に至る。昔は静岡以外でも国産プラモメーカーはあったというが、多くは別業態に移行。一方の静岡は愚直なまでにプラモデル作りに邁進したことで、プラモデル大国へと成長したというわけだ。
また、見て、触って、遊べる静岡ホビーショーも楽しいのだが、南館で同時開催の「モデラーズクラブ合同作品展」も要注目だ。これは全国模型愛好家による作品展示会で、今年はマニアが製作した約8600点の展示を見ることもさることながら、その力作を作ったモデラーたちと直接話せるのが、模型好きにとっては来場する一番のメリット。
クラブの方々は皆気さくで、製作するにあたっての技術的なアドバイスを含めて疑問、質問に気軽に応えてくれるので、今後の製作の参考になることは間違いなし。独学で進めるのも楽しいが、よりホビーを楽しむなら前人を学ぶ、真似っこするのも大切だと思う。
今年は80~90年代のヤングタイマー車が数多くラインアップ
最後に2022年静岡ホビーショーにおける、クルマ関連グッズのトレンドを紹介したい。近年コロナ禍による巣ごもり需要が高まり、ホビー&関連グッズの売り上げが増えているということで、例年以上に新商品の展示が多かったように思う。特徴的だったのはエントリーモデルと高額モデルの2極化が進んだこと。模型初心者を育てていきながら、マニアには本格的なモデルを用意するという感じだろうか。
車種でいえば、中古車として世界的に大きく相場が上昇した1980~1990年代を代表するモデルの展示が圧倒的に多かった。ただし、GT-Rのような王道だけでなく、新たな需要獲得のためこれまで市場に出回ることのなかったマイナー車種も多く、バリエーションは豊かだ。
ただし、生産量を絞っているものも多く、早く手を打たないと購入できない傾向は強い。また、ミニチュアカーの素材はこれまでのレジンやダイキャストではなく、ABSといった新たな素材も登場。停滞するのではなく進化を続けているということも印象に残った。各出展メーカーの詳細はあらためて順次紹介していきたい。