最近見かけないマフラー用部品のインナーサイレンサーって何?
マフラー出口の配管の中に装着する「インナーサイレンサー」というパーツがある。機能は名前の通り、排気音を静かにすることができるメリットがある反面、排気の抜けが糞詰まりになることからアクセルレスポンスは激落ち。それならもっと静かなマフラーにすればいいのだが、脱着することができるようになっており、インナーサイレンサーを外せばパフォーマンスをフルに引き出せるようになる。
消音効果と性能低下が相反関係にあるインナーサイレンサーの装着
インナーサイレンサーやバッフルと呼ばれるこのアイテムは、最近ではあまり見かけることが少なくなったので知らない人も多いかと思う。機能はスポーツマフラーのテールエンドに装着するもので、音を劇的に静かにしてくれるパーツだ。その代わりマフラー全体で消音しているのではなく、マフラー出口を急激に狭くするので、消音効果はあるもののアクセルレスポンスやピークパワーは大きく落ちてしまう。さらにビス留めなど容易に脱着できるものは、音量の測定値にかかわらず現在では車検をパスすることはできない(溶接やリベット固定といった簡単に脱着できないタイプで、2010年3月31日以前に製造された車両であれば車検に適合)。
それでも装着する理由があるとすれば排気音が圧倒的に静かになること。住宅地の早朝のエンジン始動では合法マフラーでも気を遣うほどなので、ネット通販サイトなどで汎用タイプのインナーサイレンサーが販売されているのは、いまも一定数の需要があるからだ。
ターボへの負担を軽減するためにインナーサイレンサーの脱着を使い分ける
ただしインナーサイレンサーを使用する際には注意が必要だ。ターボ車は、できるだけ全開走行時は排気抵抗を少なくしたいもの。それは排気抵抗がタービンへの負担になるからで、やや音量が大きめのマフラーを装着していても、普段はインナーサイレンサーを入れて、サーキットではインナーサイレンサーを抜いて走るサーキット派は多い。もちろん公道を走るのであれば合法マフラーの装着が必須であることを忘れないでほしい。
ちなみに近年の車両では、エンジン始動直後から触媒による排気ガス浄化を素早く機能させるために、ファーストアイドルの回転数が高い。そうなると静かにしたい早朝の住宅街にけたたましい排気音が響いてしまう。そんなときにも合法マフラーにプラスしてインナーサイレンサーを入れるというのは、有効な手段になる。
昨今は排気管にバルブを設けて消音させる製品も登場している
また、近年では使用環境によって、それぞれの場面に応じた音量の要望を叶えてくれるバルブを装着する手もある。バタフライ式の排気音量調節用のバルブが市販されており、これなら住宅街ではバルブを絞ることで室内から音量を抑えることが可能だ。しかし、ストレート状態にしたときにも排気管の中心にはバルブが残っているので、これが排気抵抗になってしまう。つまりは痛し痒しで、いまでもあえてインナーサイレンサーにこだわる人がいるのは、こうした理由からだ。
このバルブ付きマフラーのなかにはエンジン回転数に感応して自動で開閉するタイプもある。ドライバーが任意に音量調整することはできないが、回転数などの条件で自動的に動くなら車検にパスできる製品もあるのだ。
いずれにせよ、現在は爆音マフラーにインナーサイレンサーで消音しても、保安基準的にはグレーというかほぼクロ。マフラーの事前認証に関係のない年式のクルマでも厳密にはアウトとなるので、まずは合法マフラーを選び、その上で必要であればインナーサイレンサーを装着するのが正解だ!