日本の「ウェストコースト」新潟に70台近くのワーゲンが集まった
フォルクスワーゲンは昔から日本に定着していたおかげで、全国各地にオーナークラブが存在する。そんな名門クラブのひとつ「VWOCN(フォルクスワーゲン・オーナークラブ新潟)」の主催で、2022年5月22日(日)に「7th VWOCN West Coast Cruse 2022」と題したツーリングが開催された。
総距離160kmの本格ツーリングで味わう初夏の新潟
VWはドイツの国民車だが、アメリカ、とくに西海岸のカリフォルニアのカルチャーとの関係も深い。「キャルルック」と呼ばれるカスタムスタイルが広まっているのもその影響。そこで新潟県北部の海岸線に広がる名勝「笹川流れ」を中心に、1年でもっとも景色の良い5月に「日本のウェストコースト」としてツーリングを行っているのだ。
朝8時半に「道の駅 豊栄」を出発して北上し、村上市の「道の駅 朝日」を経由して海岸線へ。笹川流れ観光汽船の乗り場で2時間たっぷりくつろいだあとにふたたび南下するコースで、総距離100マイル=160kmに及ぶロングツーリングだ。
それなりの距離を走るイベントでありながらも、休憩ポイントが多めに設定されていてゆっくり観光することができ、ドライバーはもちろん同行した家族や仲間も楽しめる。そしてこの時期の新潟の色彩ゆたかなロケーションの良さが評判を呼び、7回目となる今年は70台近くのクラシックVWが集まった。それも新潟近県だけでなく、北は秋田から南は静岡、さらに関東地方からのエントリーも多数。いまや東日本でも有数のVWイベントとなっている。
ツーリングイベントにおいては、交通の妨げにならない気配りが非常に重要なポイント。地元のオーナークラブ「VWOCN」の皆さんが休憩ポイントなどと事前に折衝して、当日も要所要所に誘導スタッフを配置するといった気配りを徹底しているおかげで、トラブルもなく楽しい1日を過ごすことができるのだった。
新潟に集まったVWの年代も所有歴もさまざまな、老若男女のオーナーさんたちに、クラシックVWの楽しみ方を聞いてみよう。
その1:アメリカから持ち帰ってきたワーゲンバス
ほどよくカスレたペイントが味わい深い1957年式タイプ2(通称ワーゲンバス)のオーナー、清水龍青さんは東京在住の30歳。2年前までアメリカ西海岸に10年住んでいたそうで、現地でビートルの後に乗りかえたのがこのバス。日本に帰国するに際して、愛車も一緒に連れてきたのだった。
「カリフォルニアに住んでいたときにビートルを見て、かわいいじゃんって好きになりました。シンプルでかわいいし、自分でもイジって整備しやすいのが良いところですね。カスタムもやりだすと奥深いです」
その2:助手席に人がいるとコンバーチブルはさらに楽しい
埼玉県の青木卓哉さんは19歳からワーゲンに乗りはじめて現在33歳。4年前から1972年式ビートルの「1302Sコンバーチブル」に乗っていて、前回もこのツーリングに参加していたのだが、今年は助手席にカノジョさんを乗せての参加。心なしかエンジンの調子も良さそうだった。
「ワーゲンはカッコいいところもあるし、でもかわいい部分もあってキャラが立ってるんですよね。運転も楽しいです!」
その3:思っていたほど苦労せずいつでも乗れる
1975年式の白いビートル1200LSが初めてのマイカーだというのは、横須賀に住んでいる27歳の平野嵩明さん。2020年12月に栃木県のVWショップで委託販売されていたビートルを購入したのだそうだ。
「クラシックカーだからと買う前にイメージしていたほどには苦労しなかったですね。寒くても暑くても、どんなときでも動いてくれて、古いクルマだからってビクビクすることなく乗れる信頼性の高さがワーゲンの魅力です」
その4:還暦を機に20年ぶりに空冷VWへカムバック!
新潟県に在住の瀬賀吉樹さんは、1976年式のビートルが5月20日(金)、つまりツーリングの2日前に納車されたばかり! 若いころは高年式のビートルに乗っていたものの、以降はゴルフやザ・ビートルといった新しい世代(水冷式)のVWを乗り継いできたとのこと。
「ワーゲンのイベントに顔を出しているうちに、還暦になったら趣味のクルマに乗ろうかなと思うようになって、20年ぶりに空冷VWへカムバックしました。やっぱり楽しいですね。水冷のVWも運転して楽しいけれど、空冷はまた別格です。リヤエンジン・リヤ駆動の感覚も良いです」
その5:幻の「タイプ4」にひと目ぼれ
クラシックなワーゲンとして、「タイプ1=ビートル」、「タイプ2=ワーゲンバス」は有名どころで、「タイプ3」も知っていればなかなかのクルマ通。だが「タイプ4」を知っている人はかなりのマニアと言える。1968年から1974年まで販売されていた大柄なファストバックセダン&バリアントで、1972年までが「411」、それ以降が逆スラントノーズの「412」。日本でもヤナセが販売してお医者さんなどが買っていたようだが、いまとなっては現存する個体がきわめて少ない、幻のクルマだ。それゆえ、今回のツーリングの集合場所に1969年式の「411」が現れたとき、会場はザワついた。
オーナーは地元・新潟の池田 亮さん(38歳)。一昨年、仲間が神奈川県のVWショップ「K’s Collection」へカルマンギアを見に行くのに同行したら、たまたまこの411が入庫していたのでひと目ぼれして買ってしまったという。このほかにタイプ3のファストバックも所有しており、よりによってファストバックの空冷VWを2台持ちとなっている。
「ワーゲンに乗るようになって6年くらいですが、なんといっても見た目がカッコいいし、ちょっと不便なところもまた楽しいです!」
その6:ワーゲン3台のガレージハウスを自ら設計
横浜で建築事務所を営む板倉崇勝さんがドライブしてきたのは、1957年式ビートル・カブリオレだ。板倉さんはほかに1952年式ビートル、通称「スプリットウィンドウ」も持っており、奥さんの愛子さんは1958年式カルマンギアを所有。3台の50sワーゲンのための大きなガレージを備えた自宅も夫婦で設計して建ててしまっている。
「古いワーゲンに乗っていると、何もかもがマニュアル操作で、クルマの調子を見ながら走るのが本当に楽しいんですよ」
その7:「オーバル」に乗り続けて34年!
今回のツーリングに初参加したなかでも大ベテランのVWオーナーが、埼玉県の牛尾安秀さんだ。黒い1956年式ビートル、通称「オーバルウィンドウ」は25歳のときに初めてのワーゲンとして購入。それ以来、34年にわたって乗り続けているこの個体、1990年に発行されたワーゲン界の名著「VW大事典」にも掲載されている(「1957年式」として取材後にじつは56と判明)。ほかに1958年式ワーゲンバスの15ウィンドウ・デラックスも乗っている。
「好きなのはカタチかな、やっぱり。丸っこいカタチがかわいくて、高校のときからビートルに乗りたいと思ってました。クルマに限らず古いものが好きなので、ひと目見て古いクルマだってわかるオーバルウィンドウを探したんですよ。古めかしい佇まいも良いですね」
そう語る牛尾さんのビートルはオリジナル度が高いだけでなく、HAZETのツールボックスやPEROHAUSのダッシュ時計、一輪挿しのフラワーベースなど、当時もののアクセサリーも多い。さながら動く博物館のような、濃度の高いビートルなのだった。